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高畑充希主演『同期のサクラ』が、鬼気迫る展開になってきた。

今クールでは、木村拓哉主演『グランメゾン東京』の視聴率がほぼ横ばいで、他は大半が下落傾向にある。その中にあり、『同期のサクラ』だけが唯一上昇基調を続けている。

好調の要因は、主人公サクラの筋の通った生き方と、人々を感動させるスピーチ力。
ただし正しいがゆえに、どんどん不遇となっていく姿に、視聴者は涙が止まらない。

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高畑充希主演『同期のサクラ』


■"あり得ない主人公"サクラ

『同期のサクラ』は、"あり得ない主人公"を描く遊川和彦が、この上なく傑出(けっしゅつ)した人物を物語の中心に据えた作品だ。その破壊力は、これまでのどんなドラマより凄まじい。

北の小さな離島から、一人上京したサクラ(高畑充希)。
大手ゼネコンの入社式で、「私の夢は、故郷と本土を結ぶ橋を架けること」と宣言。ところが「忖度(そんたく)できない」性格から、さまざまなあつれき・トラブルを巻き起こす。

それでも周囲の態度は次第に変化する。
"あり得ない"性格のサクラに、最初は冷めていた同期も次第に巻き込まれる。どんな逆境になろうと「自分にしかできないこと」にこだわり、自分を貫き続けるサクラに、同期たちが一人ずつ真の仲間になっていく。

■初回から規格外ぶり全開

初回でまず度肝を抜かれたのは、入社式の社長のあいさつに手を挙げて、ズバズバ感想を述べた点。
「良いことを言っているのに長すぎる」とかまし、データや言葉使いの間違いを一つ一つ指摘した。現実社会ではこんな新人は絶対いない。もし「やってみろ」と言われても、誰もできないだろう。これからの長い会社人生を考えたら、「あえて指摘するほどではない」と目をつぶるのが常識的な反応だ。

そして初回ラストに出てくるサクラのスピーチがすごい。
「私には夢があります。ふるさとの島に橋を架けることです」
「私には夢があります。一生信じ合える仲間をつくることです」
「私には夢があります。その仲間と、たくさんの人を幸せにする建物を造ることです」
「それだけは諦められないので、私は自分にしかできないことをやります」
三つの夢が、あり得ないサクラの原動力であり、ドラマ全体の背骨だったのである。

■秀逸な発言の数々

同ドラマは2話以降、1話1年で展開する。
そして5話までは、同期たちがサクラの言葉に感化され成長する姿が描かれる。

2話では菊夫(竜星涼)。
部長(丸山智己)の理不尽な命令で、残業続きの菊夫。上司にノーと言えないのだ。
ところがサクラから「自分の弱さを認めることが大人になること」「会社のみんなを応援しようとする菊夫くんはすごい」「でも今一番応援すべきはあなた自身」と言われる。
この言葉を受け、菊夫は部長に「俺はもう部長の言う通りにはできません」「やらされるんじゃなく、自分がやるべき仕事をやる」と宣言した。初めてノーと言えるようになったのである。

3話では百合(橋本愛)。
女だから責任ある仕事をやらせてもらえず、得意先のセクハラも卒なくこなす百合。しかし「もう疲れた」と退社することに。ところがサクラは、「現実から逃げている」「種をまかねば一生花は咲かない」と、百合を責め、二人は「ブス」「ブス」と激しい言い合いになる。
こうした本音のぶつけ合いを経て、二人は互いを呼び捨てにし合う友達になる。

4話では蓮太郎(岡山天音)。
設計の仕事がうまく行かず、自室に閉じこもってしまった蓮太郎。サクラは彼のために上司に殴り込みをかけた。
「いろいろなアイデアを引き出す力がある。粘り強さがある」と長所を指摘する。それを目の当たりにした蓮太郎は、周りのせいにしていたこと、一人よがりで閉じこもっていたことなどを反省し、再び立ち上がった。

・同期のために上司に殴り込み!>>

そして5話が葵(新田真剣佑)。
社長賞をとった葵は、実は高級官僚の父のコネ入社で、実力を認められていないことが判明する。そして自暴自棄になってしまった。ところがじいちゃんの教えから、サクラは「勝ち負けにこだわらず、自分の価値を知ることが大切」「素晴らしい才能がある。たくさんの人を動かす力がある」と励ます。
それまでものが言えなかった父に、葵は初めて自分の考えを主張できるようになった。心理学でいうところの"父親殺し"を通過したのである。

・新田真剣佑が偉大な父を超える瞬間!>>

■会社全体を動かし始める

6話以降は、サクラの影響力が同期から一段上がる。
最初は先輩の火野すみれ(相武紗季)。入社当初はサクラのように仕事に頑張ったが、壁にぶつかり結婚に逃げ、離婚を経て、娘・つくしとの関係に行き詰っていた。

彼女を変えたのは、サクラの「自分にうそをついてはダメ」という言葉。すみれはこれで、初めて社長案件でも正しいと思ったことを行った。
娘にも「つくしはつくしのままで良い。好きなように生きなさい」と言い、二人の関係は修復した。

・波及する「自分にウソをつかない」姿勢>>

そして前回。
サクラ入社7年目でようやく故郷の島の橋の工事が始まった。ただし地盤が弱く、会社の設計では不十分なことがわかる。それでも会社は、大丈夫と島民を納得させるようにサクラに命ずる。

ところが島民を前にしたサクラのスピーチは、上司の思惑と別のものだった。
サクラが初回で話した3つの夢のうち、「一生信じあえる仲間を作る」は叶(かな)い、「その仲間とたくさんの人を幸せにする建物をつくる」も叶(かな)うと信じる。でも「故郷の島に橋を架ける」は叶(かな)わないと謝罪してしまった。

大好きだったじいちゃんはそのスピーチの最中に亡くなり、サクラは天涯孤独の身となってしまった。
そしてサクラは、会社を1年以上休み、会社をクビになることも示される。
信念を貫いた結果、個人と組織の関係がどうなるのか。遊川ドラマがどんなカタストロフィに向かい、そこにどんなメッセージが込められているのか。
いよいよ物語は、佳境に向かって疾走し始めた。

・高畑充希の夢破れる瞬間!>>

文・鈴木祐司 次世代メディア研究所

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