【インタビュー】「十人十色、みんな、ありのままでいい」。久保田利伸がアルバムを通して放つメッセージ

2019/12/05 10:26

日本のR&B界をけん引してきた久保田利伸が4年ぶりとなるオリジナル・フルアルバム『Beautiful People』をリリースした。タイトルは久保田がライブでオーディエンスに向けてたびたび発する言葉。そこには十人十色の人たちに向けて「素直に楽しんでくれてありがとう」、「裸の心になってくれてありがとう」という思いが込められているという。リスナーの気持ちを解き放ち、癒やす優しさと色気に満ちた新作に込めた願いとは?

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久保田利伸 4年ぶりとなるオリジナル・フルアルバム『Beautiful People』をリリース


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■もっと人のあたたかさや痛みが感じられたらいいのにって

――まず久保田さんがアルバムを制作する前に思い描いていたイメージがあったら教えてください。

漠然と思っていたのはアルバムを通して人情とグルーヴがずっとディレイされているアルバムになればいいなということでした。

――なぜ"人情"というキーワードが浮かんできたんでしょうか?

アルバムを作る前はふだん以上に一歩踏み込んでものごとを考えるんですけど、日々のニュースだったり、いろんなメディアを見たり読んだりしていると世の中、自分本意な人間が増えてるなって。僕が年を重ねたせいかもしれないですけど、「人のあったかさや痛みをもっと感じられたらいいのに」と思うことが増えましたね。僕もいっぱいいっぱいになると自分勝手になって「これじゃいけない」と思うんですけれど。

――世の人たちにそういう傾向があるのは想像力が低下したから?

そんな気がしますね。人のことを思う想像力。

――だから『Beautiful People』の曲たちはファンキーな曲もふくめてあたたかくて心地いいグルーヴに満ちているんでしょうか?

そうかもしれないですね。言いたいことがあったら歌詞にしたいし、それを音楽は楽しいもの、優しいもので包んでくれるはずだと思っているんです。

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4年ぶりとなるオリジナル・フルアルバム『Beautiful People』について語る久保田利伸


――タイトルは久保田さんがよくライブで呼びかける言葉ですよね?

ええ。歌っているときにアドリブで「ありがとう! Beautiful People!」って言ったりしますね。今回、アルバムのタイトルに持ってきたのは10人いたら、それぞれ喜びや悲しみの感覚、ツボが違って当然で十人十色、「みんなビューティフル!」っていうことが言いたかったんでしょうね。ひとクセあってもふたクセあっても、それぞれ良いところがあってビューティフル!って。

――さっき、おっしゃってくれた人情や優しさの話にもつながりますね。1曲目のタイトル曲では"そのままがいいよ "と歌い、王道のファンクチューン「FUN
FUN CHANT」では"キャラは まんまでかまわない"と歌っていらっしゃいます。息苦しさを感じる時代なだけに気持ちが楽になりますが、時代に放つメッセージというところは意識されていますか?

「もっとみんなが自分を出せる場があればいいのに」って思っているからですかね。この1~2年、そんたくっていう言葉が悪い意味ではやりましたけど、身近な関係もふくめて守りに入っているというか、沈黙するクセがついちゃっている気がするんです。だから、"まんまでかまわない"って言葉が出てくる。自分に言っていることでもあるんですけどね。「もっと言いたいこと言えたらいいな」、「もっと自由でありたいな」、「もっと肩の力を抜いたほうがいいな」って。

■女性そのものが人生の彩り

――久保田さんは今作をカラフルなアルバムと表現していますが、声だけとってもいろんな色、いろんな歌い方をなさっていて細やかで驚かされます。

ありがとうございます。とにかく歌うことが好きなんですよ。
究極言えば人の曲を歌っても気持ちがいいので結果、いろんなタイプの歌い方や声になると思うんです。歌が今の僕の性格や人に接する態度を作ったと感じているし、毎日、生活する上で前を歩いていく自信にもなっている。逆に言うと歌しかない感じなんですけど(笑)。

――歌=人生なんですね。では今作でチャレンジしたことは?

音も言葉も1970~1980年代のオールドスクールを意識したファンキーミュージックの王道は「FUN FUN CHANT」ですけれど、今回、いままでと違うのは伝統的なR&Bやソウルミュージックのようにたくさんのバックコーラスを入れたり、声を重ねなかったことなんです。バラードの「LIFE」や「その人」はハーモニーが薄く入っているだけでリードボーカルだけで最後まで歌いきるっていう。この数年のR&Bのトレンドがそうなんですけど、歌ってみたら音の中で声がピュアに響くので「これは新鮮で面白い!」って。飛び込むようなチャレンジではないですが、僕にとっては珍しい試みの曲が多いですね。

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久保田利伸 4年ぶりとなるオリジナル・フルアルバム『Beautiful People』をリリース


――それと今作は「人間賛歌」であり、「女性賛歌」ということですが、ロマンティックで上質なラブソングも印象的です。

基本、僕が歌っているのはラブソングが多いんですが、前から女の人にはかなわないなと思っているんです。古くはジャンヌダルクもそうですけど、男より勇気があって腹が据わっているのは女性の方が多いですよね。なにか判断して前に進まないといけない場合、男は考え込んだり、ビビッたりする確率が高いけれど、女の人は「行っちゃえ!」、「やめちゃえ!」みたいな。

――(笑)そんな女性に翻弄(ほんろう)されているラブソングが多いですが、久保田さんにとって女性はどんな彩りを与えてくれる存在ですか?

女性そのものが彩りですよ。触れていて楽しいし、話をしていても恋をしていても楽しい。女性がいなかったら人類は終わりですからね。

■裸にちょんまげのジャケットの反応は予想以上

――(笑)今作のジャケット写真のようになってしまう。砂漠のような場所を裸の久保田さんが走っていますが、グラフィックデザイナー、千原徹也さんからの発案だったそうですね。

そうです。アルバムのタイトルと簡単に内容を説明して考えてきてくれた中のひとつがこのジャケットの原型だったんです。「このデザインの振りきり方、カッコいいな」と思ったら千原さんに「モデルとか使わないで久保田さんが脱ぎますよね」って言われて僕も振りきらなきゃいけないって(笑)。

――髪形は久保田さんのアイディアだったとか。

ええ。当時、まだ髪は短かったんですけど、時代設定もわからない背景の中を現代人の髪形で走ったら変なリアリティが出るんじゃないかと思ったんです。ちょんまげにしたら誰もいなくなってしまった未来の地球かもしれないし、火星かもしれないし、アマゾン、もしくはアフリカかもしれないって。僕自身はアマゾンのインディアンのイメージも面白いなと思っていたんですが、あとから千原さんもアマゾンに新種の人類が発見されたニュースを見たときに僕のジャケットのデザインを頼まれたと言っていたので一致したと思いましたね。

――ちょんまげは1996年の「LA・LA・LA LOVE SONG」以来だし、いろいろ反応も返ってきているのでは? 「攻めてますね?」とか。

確かにその言葉はよく聞きますね。僕はそんなつもりはなくてシュールでファンキーで僕っぽいかなと。ジャケットの色合いもセンスも大好きなんですよ。引きの写真だし、裸で走っているのはたいしたことないと思っていたんですけど、反応は予想以上でした。ちょんまげは懐かしいとかうれしいって思う方もいらっしゃるのかなと。この髪形にして良かったことは今日(取材時)のような派手な服を着ても負けないこと。ジーンズと白いTシャツでもオシャレに見えるし、スタイリストさんも助かっているようです(笑)。

――久保田さん自身はアルバムをどんなふうに楽しんでもらえたらハッピーですか?

基本的には手にとっていただけたら「ご自由に」なんですけど、いちばん最初はひとりぼっちで曲順通りに聴いてほしい。そのあとはBGMで楽しんでくれてもいいし。最初は心と心で通じ合いたいですね。

――最後に追加公演も発表された4年ぶりの全国ツアーで久保田さんが掲げているテーマについて教えてください。

最終的に「音楽っていいな。人間っていいな」っていう気持ちに僕もみんなもなれるはずだと信じてショーをやっていきます。最初にお話した十人十色の人たちの声援や行動や聴き方が集まってのコンサートなので、アーティストvs.オーディエンスではなく人間と人間の触れ合いだと思っています。

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久保田利伸 4年ぶりとなるオリジナル・フルアルバム『Beautiful People』をリリース


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(取材・文/山本弘子)

■久保田利伸
静岡県出身。R&Bを日本のポップシーンに持ち込んだパイオニア的存在。作曲家として田原俊彦や鈴木雅之、小泉今日子などに楽曲提供したのち、1986年にシングル「失意のダウンタウン」でメジャーデビュー。数々のヒット曲を送りこみ、"地球を相手に歌ってゆきたい"という志のもと1993年よりN.Y.に移住。
USレーベルと契約を結びアメリカを中心とした世界で3作のアルバムを「Toshi」名義で発表。R&Bアーティストの殿堂と言われるUS老舗テレビ番組「SOUL TRAIN」に出演。近年は海外アーティストのみならず、KREVA、MISIA、EXILE ATSUSHI、AI、JUJUなどとのコラボレーションも。たゆみない探究力で今のR&Bを表現し、かつポップセンスを備えた音楽性は後進ミュージシャンに多大な影響を与え続けている。現在4年ぶりとなる全国ツアー「Beautiful People」敢行中。代表曲に「流星のサドル」「Missing」「LA・LA・LA LOVE SONG」「LOVE RAIN~恋の雨~」「Bring me up!」など多数。座右の銘は"究極の強さは優しさ"。

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作品には、関わる人の想いや意志が必ず存在する。表舞台を飾る「演者・アーティスト」、裏を支える「クリエイター、製作者」、これから輝く「未来のエンタメ人」。それぞれの立場にスポットをあてたコーナー<視線の先>を展開。インタビューを通してエンタメ表現者たちの作品に対する想いや自身の生き方、業界を見据えた考えを読者にお届けします。