ワンチームだからこそ活きる木村拓哉~安定した強さ『グランメゾン東京』の構造~

2019/12/ 9 17:55

TBS日曜劇場『グランメゾン東京』が、好調のまま終盤に入った。

今季ドラマの中では、『ドクターX』など長寿シリーズを除くと、世帯視聴率はトップだ。しかも初回から8話まで、12.0±1%ほどと安定した推移を見せている点がすごい。
物語にハマった視聴者が多い証拠だろう。

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木村拓哉主演『グランメゾン東京』(写真はイメージ)


他者とのからみで映える木村拓哉の演技>>

■エッジの効いたキャスティングの妙

人気ぶりはまず、豪華キャストがそろっている点だろう。しかも個性豊かな俳優一人一人が輝いている。
木村拓哉の実力は言うまでもなくスゴイ。加えて早見倫子シェフを演じる鈴木京香の、かわいすぎる理想的な"オバさん力"も圧倒的だ。

ドラマの中では、尾花夏樹(木村拓哉)と京野陸太郎(沢村一樹)が、倫子シェフをガッチリと支えている。三つ星レストランを三人が、クンズホグレツで目指す展開がとても面白い。

ヒロイン1人を、傍からヒーロー2人でタッグを組み、ライバルでありながらも支えていく構図は、木村拓哉が前回の出演した日曜劇場『A LIFE~愛しき人~』と同じシチュエーションだ。
ただし今回の『グランメゾン東京』は、その時とはちょっと違う。

いつもの木村拓哉ありきのドラマではなく、一匹おおかみの尾花夏樹の才能にほれ込んだ料理人たちが集結している。大きな夢を現実にするために、一丸となって努力と情熱を傾け、挑み続けている点が麗しい。
つまりドラマのヒーローは1人ではなく、フルコースを作るためのメインシェフ、スーシェフ、パティシエ、ギャルソン、アシスタントと、一人が欠けても最高の料理を提供することはできない。

まさにワンチームの大切さを伝えている。
まるで前クールの『ノーサイドゲーム』と、その直後に開催されたラグビーワールドカップの"ワンチーム"の余韻が漂う。しかも少し異なる香りと風味をつけて、ワールドカップの勢いという風を翼に蓄え、旋風を巻き起こしているかのようなまぶしさがある。
時代の空気を上手に反映した作りには脱帽だ。

■バランスの良い中年たち

毎話登場する異なるゲストも面白い。
登場人物たちは、途中いろいろあるが、最後にはグランメゾン東京が作った料理に満足する。
そんな彼らがグッとくる喜びを表現するシーンは、めったにうれしさを表に出さない尾花の愛らしさと、素直でまっすぐな感情表現をする倫子シェフの愛らしさと重なり、とてもチャーミングな場面となっている。

お互いを"オバサン"や"オジサン"とつつき合いながらも、中年だからこそ発揮できる実力がある。
40代といえば、世間的にはアラフォー、アラフィフと呼ばれ、キラキラした華やかな光が圏外になりそうに見えるが、フィジカルではまだまだ体力もあるし、積み重ねた経験と努力が、知識と冷静な準備で整い、実りある結果をもたらすことができる時期でもある。

日曜劇場のファンとしては、中年の頑張りと情熱を燃やす姿に、共感する視聴者は多いのではないだろうか。
下に続く若い後輩たちの育て方も、新たな才能にパワハラするでもなく、引き抜いてきて「一緒にクリエーションしよう!」とリスペクトしながら育てていく。
こうしたドライだが合理的であたたかい関係の作り方が、潔くてかっこ良い。

■スパイスもパーフェクト

努力を積み重ねながら夢を追うというシナリオは、王道の中の王道だが、このドラマの面白さは、プラスαのスパイスが効いている点。
一つは、おいしいとは何かをいろんな角度から見せている点。8話では、味覚には個人差や主観が入るので、ランク付けすることはどうなのかという相対的な視点が、単純になりそうな展開に奥行を持たせた。

もう一つは、3年前の尾花のレストラン「エスコフィーユ」での事件。
誰が犯人で、その影響がどんなものだったのか、ミステリー仕立ての展開が絡み、視聴者の興味をかき立てている。
その鍵を握るのが、マリークレール編集長のリンダ役(冨永愛)。クールで圧倒的な存在感が、怪しさと陰影を鋭く差し込む。

まだまだ真相解明には遠いようなストーリー展開だが、次回の第9話で、じりじりと真相に迫ってきそうな予感だ。
一体、どんな結末が待っているのだろうか。今後の展開にワクワクしながら、目が離せない。

他者とのからみで映える木村拓哉の演技>>

コラムニスト:はたじゅんこ
監修:次世代メディア研究所