原始、中谷美紀は太陽であった!?~『ハル~総合商社の女~』の柔らかな魅力~

2019/12/13 17:17

テレビ東京の中谷美紀主演『ハル~総合商社の女~』が、最終回を迎えた。
月曜の22時から放送のこのドラマ枠は、第一線で働くビジネスマンに焦点を絞ったストーリーが売りである。ただし今シーズンは"ビジネスウーマン"の仕事と子育て、およびシングルマザーライフを描いた作品となり、従来とはちょっぴりテイストが異なっていた。

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中谷美紀主演『ハル~総合商社の女~』


人間性と柔らかさが魅力の中谷美紀ドラマ>>

■ビジネスウーマンの新たな姿

ドラマの世界観は時代を反映することが多い。
中でも当ドラマは、正に"現代"を象徴する要素がたくさん詰まった、興味深い展開となっていた。

働く女性が増え続ける中、離婚率も増え、シングルマザーやシングルファザーも珍しくない。
ただしそんなケースが増えようとも、男社会の日本の現状では、働きやすい環境にはなかなかなってくれない。だからこそ、ドラマの中で海原晴(中谷美紀)が、颯爽(さっそう)と前向きに何事にも突き進んでいく姿は、実に気持ちが良く、応援したくなる。

女性が仕事に生きがいと誇りを持つ。
実現困難に見える案件もポジティブに捉え、あの手この手と努力を惜しまない。さらに経験と知能とアイディアをフル回転させ、欲しい仕事を最後にはゲットしていくハングリー精神とフットワークの軽さ。
そんな頑張る姿は、聡明(そうめい)な美しさとセクシーさを、ビジネスウーマンから引き出すようだ。

女性解放運動の先駆者・平塚らいてうは、雑誌「青鞜」創刊号に「原始、女性は太陽であった」というタイトルの発刊の辞を寄せた。そんな希望を想起させるような、中谷美紀の輝きぶりだ。かつてアメリカのブッシュ政権時代に活躍した、ライス国務長官を思い出させる。

もう良い加減に、おとなしく半歩下がってほほ笑む女性を良しとする時代に、終わりを告げようではないか。

■人間味も兼ね備えたビジネスウーマン

ハルが働く経営企画部には、コネ入社の社員・一乗寺秀人(忍成修吾)がいる。
高山副社長(奥田瑛二)から降りて来た奈良空港建設事業の仕事は、彼の父・一乗寺俊太郎厚生労働大臣(山田明郷)が絡む疑惑の仕事だった。

それを知ったハルは、副社長室に怒鳴り込んだ。
前回の藤尾(山中崇)に責任問題で罵倒した時も、かなりのスカッと感があった。ところが今回の副社長の件は、殴りかかりそうな迫力で、アメリカ仕込みのアグレッシブなスキルが生かされている。
圧巻のシーンだった。

一方ハルは、「強くて完璧な女」だけではない。
仕事ではポジティブで完璧だが、一人で育てる10歳の息子・涼(寺田心)のことになると、これで良いのかと悩む普通のお母さんになる。上司で涼の父親の和田寿史(藤木直人)との父子関係も、元妻としてできることを考え、最善を尽くしている。

そこには合理的解決だけを求めるビジネスウーマンだけでなく、人として誠実に向き合うハルがいる。
仕事中に学校からの緊急連絡で、涼がけがをしたと聞くと、泣きながら病院に駆けつける。そんなハルの必死な姿は、とても印象的で好感が持てる。
そう、仕事に没頭するからといって、子供のことを思わない親はいないのだ。

■多彩な人間性の魅力

完璧なキャリアウーマンのもう一つの顔が、一色でなく多彩な人間性を持ち合わせている点。
保守的な総合商社のあり方と未来を考えると同時に、個別には地域に根付く社会貢献につながる企画にも真剣に取り組む。さらに周囲を巻き込んで、一生懸命に仕事をすることの楽しさを伝えていた。
大げさに言えば、日本の経済の大枠に一石と投ずると同時に、次世代への責任も全うしようとしているように見える。ハルの頑張る姿に、勇気とやる気をもらえる気がする。

さらに当シリーズおよび最終回は、働き方だけでなく、人間としてのあり方を考え、姿勢を正すきっかけも与えてくれてもいた。
その意味で、女性だけでなく、男性にも、働いていない人にも、人間として生きていくことに勇気を与えてくれる秀作だったのではないだろうか。
大切な話を柔らかく伝えてくれた当ドラマに、お疲れさまと言いたい。

人間性と柔らかさが魅力の中谷美紀ドラマ>>

コラムニスト:はたじゅんこ
監修:次世代メディア研究所