メジャーデビューを果たしたtricotと、川谷絵音率いる異色バンド・ジェニーハイ 双方でフロントマンを務める才女・中嶋イッキュウの頭の中

2020/1/27 12:00

予測不能で摩訶不思議(まかふしぎ)なサウンドに、フックの効いたメロディが絡み合う。作品をリリースするごとに変化・進化を続けてきた4人組バンド、tricotが結成10周年にしてついにメジャー・デビュー・アルバム『真っ黒』をリリースする。その唯一無二の世界観はそのままに、ネオソウルやシティポップ的な要素を取り入れるなど今作でも新たな試みが随所にちりばめられている。作詞作曲を務めるのはボーカル&ギターの中嶋イッキュウ。これまで以上にフックのあるメロディは、新たなファン層を獲得すること必至だ。2018年には川谷絵音、小籔千豊、くっきー!(野性爆弾)、新垣隆とともにジェニーハイを結成した中嶋。自身のファッションブランドを立ち上げるなど、さまざまな分野でクリエイティヴを発揮する彼女のそのモチベーションは、一体どこから来ているのだろうか。


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バンド・ジェニーハイとtricotでフロントを務める中嶋イッキュウ


■モーニング娘。は結成の経緯からずっと追っていた

── 小さい頃は、どんな子供でしたか?

中嶋:物心ついた頃から将来の夢は歌手でした。当時『ASAYAN』(テレビ東京で放送していたオーディション・バラエティ番組)が好きで、モーニング娘。も結成の経緯からずっと追っていたんですけど、本格的にハマったのは後藤真希さんが加入してから。「金髪のアイドル」というのが衝撃的で、すごく憧れていましたね。気づいた時には「私もあの世界の一員になりたい」と思うようになっていました。

──自分で曲を作るようになったきっかけは?

中嶋:小学生くらいの頃からカセットテープにオリジナル曲みたいなモノを吹き込んだり、ノートに歌詞を書いたりしていました。その頃好きだったJ-POPの歌詞を寄せ集めたような、今読み返したらメチャメチャ恥ずかしい内容だと思うんですけど(笑)、それに合わせて適当に歌っていたんですよね。それをソニーに送ったりしていました(笑)。


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「椎名林檎さんは、衝撃でドハマリしましたね。」


──当時、憧れていたアーティストは?

中嶋:小さい頃は、同居していた叔父が毎週J-POPのヒット曲をMDに入れてプレゼントしてくれていて。それがいつも楽しみで、寝る前にいつも聴いていました。なので、誰か特定のアーティストを好きになるというよりは、いわゆるヒットソングとかカラオケでよく歌われるような曲が好きだったし、その影響が強いのかなと今でも思います。特に浜崎あゆみさんはよく聴いていましたね。高校に入ってバンドを組むようになってからは、JUDY AND MARYや椎名林檎さん、school food punishment、相対性理論などがお気に入りでした。特に椎名林檎さんは、モーニング娘。以来の衝撃でドハマリしましたね。

──tricotの音楽性の、ポップな部分はそういうエッセンスが凝縮されているのかもしれないですね。

中嶋:そうだと思います。あと、お兄ちゃんが私以上に音楽好きで、家の中では常にMTVとか流れていたんですよ。当時は家族でTSUTAYAへ行って、CDやDVDを借りるのが習慣だったんですけど、そこでもお兄ちゃんが大量に洋楽のCDを借りていて。私はその中から自分が気に入ったものを選んで聴いていたんですけど、そこでSum 41やグリーンデイ、アヴリル・ラヴィーンなんかを知り、高校生になってからはエヴァネッセンスやメタリカ、今も一番好きなシステム・オブ・ア・ダウンなどに出会いました。

■お金を「人を喜ばせた報酬」と考えるようになって変わった

──ちなみに、今のイッキュウさんを形成した本というと?

中嶋:まずは、デイブ・アスプリーの『最強の食事』。私、一時期ピザにめちゃくちゃハマってて、一日三食ピザっていうのを3カ月続けたことがあったんです。そしたら10キロくらい一気に太っちゃって。

──それは無理もないです......。

中嶋:急に太ったからすっごいしんどくなっちゃって、ライブでも2曲目でゼエゼエいうくらいの感じで「これはやばい」と。それでダイエットのための本をいろいろと読み漁ってたんです。見かけたら買う感じで20冊くらい読んだ中、ダイエットとかの観点からではなく「食事を見直す」という意味でこの『最強の食事』がすごく良かったんですよね。

例えば、この時間帯にこういうものを食べると仕事の効率がアップするとか、逆にこれを食べると効率が下がるみたいな。そこに書かれている通りの食事の取り方をしていたら、頭も体もほんまに身軽になりました。その本は今もたまに読み直しますね。「ヨーグルトは朝に食べない方がいい」とか、結構意外な事実も載っているんです。ただ、結構前に出版された本なので、その後科学的に覆されたケースもあるかもしれないですけど。

──ぜひ読んでみます。


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「モノより経験にお金を使った方が自分のためになると気づきました」


中嶋:それと、ジョージ・S・クレイソンの『バビロンの大富豪』を読んでからは、お金に関しての考え方がガラリと変わりました。私はそれまでお金に対して無頓着で、あればあるだけ使ってしまうタイプだったんです。でも、自分でブランドを立ち上げる時に「お金をためなきゃ」と思って。でもため方が分からへんから、いろいろ調べてたらこの本に出会いました。

今までの私は、お金を「お駄賃」みたいに考えていたんです。でもこの本を読んでからは、「人を喜ばせた報酬」だと思えるようになり、自分のやっていること一つ一つを頑張れるようになりました。お金の使い方にしても「安いから買う」みたいな浪費癖があったんですけど、モノより経験にお金を使った方が自分のためになると気づきました。

──金銭感覚だけでなく、ライフスタイルそのものにも影響を与えたのですね。

中嶋:そうですね、ライフスタイルもガラッと変わりました。

■曲にグッズがついてくるのではなく、グッズに曲がついているような

──tricot結成の経緯を教えてください。

中嶋:ギターのキダ モティフォとは高校の軽音楽部の先輩後輩で、ベースのヒロミ・ヒロヒロとはライブハウスで顔見知りでした。それぞれに別のバンドを組んでいて、お互い対バンしたり見に行ったりしていましたが、当時のバンドがメンバーの脱退や解散などをしたタイミングで一緒にバンドをやることになりました。その後、ドラマー・オーディションに参加した吉田雄介が去年正式加入して今に至ります。


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「これまで足りなかったピースがハマった」


──今年結成10周年を迎えますが、これまでの活動でターニングポイントになった出来事は?

中嶋:やはり吉田さんの加入です。これまで足りなかったピースがハマったような、やっと心から「メンバー」と思える人が現れて「ホンマにこんなことあるんや!」と思うくらい有難いですね。吉田さんは、これまでいろいろなシンガーさんやバンドのサポートをされてきた方で、私たちはほぼtricotしか知らなかったから、そういう意味で私たちとは全く違う視点でバンドを見てくれるので、すごく勉強になります。

──最近、ソロプロジェクトである「SUSU by Ikkyu Nakajima」を立ち上げられましたが、その経緯を教えてください。

中嶋:前ドラマーが脱退した2014年あたりに、当時のマネージャーから「メンバー全員がそれぞれソロ作品を作ったら面白いのでは?」と提案があり、ソロ作品用としての楽曲制作を始めました。みんなやっていると思い込んでいたのですが、今のところ自分だけみたいなんですよね(笑)。テーマは「音楽とファッションの融合」で、Tシャツに二次元コードの刺繍(ししゅう)をして、それを読み込むと楽曲がダウンロードできるみたいな。曲にグッズがついてくるのではなく、グッズに曲がついているような商品を展開しています。

──ファッションは昔から好きでしたか?

中嶋:センスはなかったけど、好きでしたね。音楽もファッションも身近な芸術という意味では同じで、作る側にとっても、それを買う側にとっても自分を表現するツールだと思います。個人的には形が美しいものや、変わったものに惹(ひ)かれます。曲でいうと「意外な展開!」みたいな、自分がtricotでやっているようなことを服にも求めていますね。

■いろいろ試してどんどん変化していってブレまくった末に残ったものが「自分」なのかな

──そして昨年は川谷絵音さん、小籔千豊さん、くっきー!さん、新垣隆さんとともに、ジェニーハイを結成しました。とても個性的なメンバーですが、イッキュウさんにとってtricotとの違いはどんなところにありますか?

中嶋:tricotは自分が引っ張っていかなきゃという気持ちも強いんですけど、ジェニーハイはみなさんの胸を借りるようなところもありつつ、ちゃんと恩返しというか「迷惑かけないようにしなきゃ」というモチベーションでやっていますね。しかもジェニーハイのような曲はボーカルが要だと思うので、改めて自分の歌を鍛え直そうと思っています。


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「(ジェニーハイのメンバーは)本当にすてきだなと思っています。」


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──バンドの雰囲気はどんな感じですか?

中嶋:皆さん全員優しくて、その優しさのジャンルもそれぞれ違うんですよ。しかも、みんながみんなをちゃんと見ていて、気を使い合っているし視野も広い。別に意識してそうしているわけじゃなく、自然とそうなっている感じが本当にすてきだなと思っています。

──ところで、イッキュウさんが音楽活動において大切にしていることは?

中嶋:私は性格が飽き性で、変化しないと続けていけないところがあるんです。それって同じことをずっと続けられない「弱さ」と思う時もあるし、何か一つを極めている人のことうらやましく思う時もあります。でも、tricotの中でもどんどん新しいことにチャレンジしていきたいし、いろいろ試してどんどん変化していってブレまくった末に残ったものが、「自分」なのかなと思うんです。だから、フットワークの軽さは大切にしていきたい。「とりあえずやってみる」の精神で、新しいことにどんどん飛び込んでいきたいですね。

──30代になって、音楽への向き合い方や歌いたいことにどんな変化がありましたか?

中嶋:やっぱり「伝えたい」「わかって欲しい」「共感して欲しい」というよりは、「一人でも多くの人に楽しんで欲しい」気持ちの方が強いので、メッセージ性というよりは「こんな言葉選びもあるんや!」とか驚いてもらいたいし、芸術作品として見て聴いて楽しんで欲しいです。そういう、想像力が膨らむような作品を、これからも作っていきたいと思いますね。


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「腸は幸せホルモンを作るところ」


──今後、挑戦していきたいことは?

中嶋:動物の保護活動を応援するイベントをいつかやりたいです。それと、実はもう始めているんですけど「グルテンを摂取しない」ことにしました。去年の暮れに出演した、空きっ腹に酒(大阪を拠点に活動するバンド)のイベントで、ボーカルの田中(幸輝)くんが「1年間ラーメンを絶っていた」と話していて。一番好きな食べ物だったらしく、特にダイエットとかそういう理由じゃく「大事なものを辞めてみることに挑戦した」と。それ、私もやってみたいなって思ったんですよね。

好きな食べ物はあり過ぎて決められなかったから、前からやりたかった「グルテン断ち」を、ジェニーハイのCDJ出演後の打ち上げで宣言しました(笑)。そしたら小籔さんが「年に15回は食べてもいい」と言ってくださったんですよ。

──年に15回は、結構多くないですか?(笑)

中嶋:あははは! 月1プラス、誕生日とクリスマスのケーキ、後もう1回くらい付けてくれました。でも、パスタもお好み焼きも、たこ焼きも食べちゃダメなんですよ? ちなみに今のところは成功中です。グルテンは腸に負担をかけると言われていて、腸は幸せホルモンを作るところなので、今年はキレイにしていきたいと思います。「腸活」ですね!


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中嶋イッキュウ


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■中嶋イッキュウ(なかじまいっきゅう)
1989年生まれ
2010年9月1日、キダ モティフォ(Gt、Ch)、ヒロミ・ヒロヒロ(Ba、Ch)とともにtricotを結成。直後に自主レーベル、BAKURETSU RECORDSを立ち上げる。 展開の予測できない独特でスリリングな楽曲と、エモーショナルな力強さと心の琴線に触れる繊細さを併せ持つヴォーカルが絶妙にマッチし唯一無二の世界観を生み出している。2017年に吉田雄介(Dr)が加入し現在の4人組に。2019年、メジャーデビューの決定とavex/cutting edge内にプライベートレーベル「8902 RECORDS」設立を発表。また、川谷絵音、小籔千豊、くっきー!(野性爆弾)、新垣隆とともに結成したジェニーハイのボーカリストとしても活動している。

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(取材・文・写真:黒田隆憲)