【インタビュー】大沢たかお「お客さんに満足してもらうために」突き進む俳優道

2020/1/31 10:57

映画、ドラマ、舞台と常にチャレンジを続ける俳優・大沢たかお。最新作映画『AI崩壊』でも、2030年という近い未来を舞台にしたサスペンス超大作をオリジナル脚本で臨むという挑戦に大いに共感し、主人公を熱演した。これまで数々の映画に出演してきた大沢だが、公開するまでは「ずっと心配なんです」と胸の内を明かす。そこには「見る人に満足してほしい」という大沢の強いポリシーが垣間見える。

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映画、ドラマ、舞台にチャレンジを続ける俳優・大沢たかお


■とにかくすべてをさらけ出して挑んだ作品

近年の日本映画界において、オリジナル作品が企画として通ることは非常に稀(まれ)だ。特にバジェットの掛かった大作となれば、ほぼ皆無に等しい。しかも、SFというジャンルで挑むからには、入江悠監督をはじめ、スタッフ、キャストともに並々ならぬ決意で臨まなければ太刀打ちできないという思いがあった。大沢も「脚本段階で、どういうゴールがいいのか、もっと言えばどういう映画にしたいのか、それが監督やプロデューサーと一致することが究極なのかなと思うんです」と語っていたが、本作では脚本段階で自らのすてきだと感じることや価値観などを積極的にディスカッションした。

入江監督を「意見をしっかりと聞いてくれる奥行きのある方」と評した大沢。「映画は監督のものだし、監督に決定権がある。でも僕自身も自分のなかで好き嫌いがあるのに黙っているのはフェアじゃないと思うんです。もちろん好きでも嫌いでもやるのが俳優なのですが、せっかくオリジナル作品で、入江監督をはじめみなさんがさらけ出して挑戦しているのだから、僕も自分の思いは伝えるのが礼儀だと思ったんです」と熱い思いを吐露する。

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「僕はトム・クルーズじゃないので、等身大の主人公を意識した」


裏を返せば、それだけ本作が胸を熱くさせるだけのチャレンジに値する作品だということだ。大沢自身、主人公の人物造形に対して「SFものというとハリウッド大作をイメージするかもしれませんが、僕はトム・クルーズじゃないので、等身大の主人公を意識した」と会見で話していたが、自身の信じる道を突き進んだ。

■インターネットでの評価は気になるけれど、基本的には見ません

キャスト、スタッフがベストを尽くして作り上げた『AI崩壊』。しかし、いつも大沢は撮影が終わってから、公開を迎えるまでは、ずっと不安に苛まれるという。「自分たちがベストを尽くしたと思っていても、判断するのはお客さん。撮影が終わってから最初の1週間ぐらいは、すごくハッピーなのですが、少し時間がたつと心配になってくるんです」。

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「観客が最高だと言えば、それがすべてなんです」


そこには大沢なりの俳優としての持論がある。「俳優として天才的な表現をしようが、100パーセント満足な表現をしても、お客さんが満足してくれなければダメ。たとえば二日酔いで芝居をして、自分では全然ダメだと思っても、観客が最高だと言えば、それがすべてなんです」。どんなに完ぺきな役作り、プラン通りの芝居ができたとしても、興行で結果を残せなければしょうがないというのだ。

もちろん、映画メディアの特性として、すべてのお客さんから高い評価を得られることは無理だということは自覚している。それでも「見た人が満足するか」というのは大切なことであり、作り手はそこからは逃げることはできないという。「いまはインターネットも普及してきて、簡単に作品の評価を見ることができますよね。『ネットの意見だから』と逃げることはできますが、ある程度は受け入れなければいけない。昔だったら評価というものは、意識しなければ知らずに済んだのですが、いまはそうはいかない」と笑う。

とは言いつつ大沢自身は「僕はなるべく見ないようにしています。なんとなく自分の子どもを評価されているようで、しんどくなっちゃうんですよね」とインターネットとの向き合い方を語るが「でもSNSの発達によっていいものは良いと伝えられるのは、映画にとっても大きなプラスだと思います。いままでって、宣伝にだまされて『失敗した!』って映画から離れてしまった人も多いと思う。一般の人の言葉や叫びがちゃんと伝わるという意味では、フェアな時代になったのかなと思うんです」と意見を述べる。

■現場では先輩・後輩はない!

こうした情報伝達手段を含めた社会の変化は、大沢が作品に取り組む姿勢にも多少なりとも影響を与えた。「この10年を見ても、世の中は大きく変化しています。それに伴い、自分の仕事の選択ももちろんアジャストしていかなければいけないと思っています。参加する作品自体の判断も変わってきました。ただだからと言って、一本に対する情熱はデビュー当時からはまったく変わっていないとは思っています」。

その基準については「秘密です」とつぶやく。自分では明確に分かっているというが「あまり公表することではないと思うので......」と笑う。それでも国内外を問わず、精力的に活動は続く。「以前から海外が好きだったので、年齢と共に変わったという意識はないのですが、人という意味では、日本人、外国人という垣根なく接した方が面白い。Netflixなどもそうですが、企画自体も世界基準で物事を考えるようになってきていますしね」。

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「芝居って相手を信じなければできない」


こうした大沢の姿勢に憧れる後輩は多い。本作で共演した賀来賢人や岩田剛典も、現場での大沢の姿に羨望(せんぼう)のまなざしを向けていたが「ないですよ。こんな変人のアプローチに憧れるわけないじゃないですか」と一蹴したが「でも、現場では先輩、後輩なんてないんですよ。基本的にみんながうまくやらなければ成り立たない。もし僕がアドバイスをしているなら、その時点でダメなんです」と持論を展開。
 
続けて「芝居って相手を信じなければできない。一ミリでも疑ってしまったら芝居が崩れてしまう。どんなに人間性を否定しても、対峙(たいじ)する人の芝居だけは100パーセント信じないと絵が成立しないんです」と力説すると「今回はすごい役者さんたちがそろっていました」と現場に感謝する。さらに大沢は「僕がもし、俳優としてなにか才能があるとしたら、人の縁に恵まれていることです」と語る。
 
■気力充実!作品がリフレッシュに

作品では2030年という10年後が描かれている。大沢にとっての10年後は――と質問すると「この作品でも描かれていますが、本当に5年後10年後がどうなっているのか分からない。そんななかで、先に目標設定することって意味をなさないと思っています。目の前にあることを100パーセントの力でささげた方がいい。その意味で、いまはとてもシビアに作品に取り組んでいるので、やっているときは『もう次がなくてもいいかな』と思っちゃいます。このやり方が正解か不正解かは分かりませんが、自分には合っている生き方かなと思っています」と回答してくれた。

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「やっぱり不安なんです。公開の前日の夜は寝られないんですよ」


だからこそ、撮影での緊張感を緩める必要がないというのだ。「もちろん肉体的にはシビアな部分はありますが、とてもいい作品に出合えていて、自分の目標と作品が目指していることが一致している。だから撮影が終わっても、すごく最高の状態のままいられるので、なにかでリフレッシュする必要がないんです」。

大沢の魂を込めた作品が公開を迎える。近年の日本映画にはないスケールでありつつ、大沢が話していたように「どこかで見たような......」という既視感がない日本映画に仕上がっている。それでも「やっぱり不安なんです。公開の前日の夜は寝られないんですよ」と苦笑いする大沢を見ていると、なんとも人間臭く、誰からも愛される存在なんだなと感じてしまう。

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大沢たかお



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■大沢たかお
東京都出身。モデルとして芸能活動をスタートさせると、1994年ごろから俳優業に転身。映画、ドラマ、舞台と幅広い分野で活躍し、『解夏』(2004年)で第28回日本アカデミー賞優秀主演男優賞、『地下鉄(メトロ)に乗って』(2006年)で、第30回優秀助演男優賞を受賞。その他、ドラマ「JIN-仁-」(2009年~)や、映画『藁の楯 わらのたて』(2013年)、『風に立つライオン』(2015年)など代表作は枚挙にいとまがない。

■トレンドニュース「視線の先」 ~築く・創る・輝く~
エンタメ業界を担う人が見ている「視線の先」には何が映るのか。
作品には、関わる人の想いや意志が必ず存在する。表舞台を飾る「演者・アーティスト」、裏を支える「クリエイター、製作者」、これから輝く「未来のエンタメ人」。それぞれの立場にスポットをあてたコーナー<視線の先>を展開。インタビューを通してエンタメ表現者たちの作品に対する想いや自身の生き方、業界を見据えた考えを読者にお届けします。

(取材・文/磯部正和)
(撮影/ナカムラヨシノーブ)