「誰にも負けないものを見つける」ビッケブランカが語る、音楽制作への取り組み方
2020/3/ 4 12:00
ハイトーンのファルセットボイスを武器に、マイケル・ジャクソンやSMAP、MIKAをはじめ古今東西さまざまな音楽の影響を消化吸収しつつ、独自のポップソングへと落とし込んでいくシンガーソングライターのビッケブランカ。彼のクリエイティビティはどこから湧いてくるのか? ミュージシャンになった経緯や1年4カ月ぶりの新譜となるサード・アルバム『Devil』の話、さらに音楽と同じくらい真剣に取り組んでいるというゲームの話まで伺った。
■「誰にも負けないことを一つ見つけて、それで生きていけ」
――ミュージシャンになろうと思ったきっかけを教えてください。
「誰にも負けないことを1つ見つけて、それで生きていけ」って親に言われて育ったんです。なので小学生のころから、他人に負けないものは何だろうとずっと考えて生きていました。好きなことでも自分が1番になれないとわかったらあきらめることもありました。それでふと、ずっと誰にも負けなかったもの、自分が1番頼りにされているものは何だろうと考えてみたら、音楽だったんですね。
――ミュージシャンを目指したというよりも、ミュージシャンという選択肢しか考えていなかったということですか?
はい。いまも子供のころの延長でしかないんです。「ミュージシャンになろう!」って目標を掲げたことはいちどもありませんでした。曲を作って家族に聴かせることの延長として、今たまたま大勢の方々に聴いていただいている、という気がします。
――音楽にまつわる、何か印象に残っている出来事はありますか?
自分が音楽に向いていると確信できたきっかけが、少なくとも2つありました。1つは母親の誕生日に作曲して、演奏したら泣いて喜んでもらえたこと。もう1つは中学生の時に合唱コンクールで圧勝したことです。ただ、何か決定的なきっかけがあったというよりも、日常の中で感じたことの積み重ねがいつの間にか確信に変わっていったのだと思います。
――音楽をなりわいにしたいという以前に、自分が音楽に向いていることを発見した、ということでしょうか。
誰でも絶対に1つは秀でたものがあると思うので、それを見つけられるかどうかが重要だと思うんですよね。自分が好きなことに固執してやり続けるのではなくて、本当に向いていること、やるべきことを見つけられるかどうか。若い人たちから取材を受けたときは、それを間違えずに見つけてほしいといつも伝えています。
――音楽に向いているとひとくちに言っても、ビッケブランカさんの場合は作詞や作曲/編曲から歌/演奏まですべてご自身で行っています。
そうですね。僕は1人の人間がどこまでできるのかを追求するのが好きなんです。スポーツも個人競技に魅力を感じるんですよね。100メートルをどれだけ速く走れるか、とか。団体競技でも孤高の存在に興味があります。実は僕は元メジャーリーガーのイチロー選手と地元が一緒で、実家も近所で小中学校も同じなんですけど、彼はチームのなかで彼にしかできないことを黙々とやっていますよね。そういうことをかっこいいと思う感覚が根っこにあるので、ソロで音楽活動をしている人を尊敬していますし、僕自身も1人でやりたいと思っています。
――最近は音楽制作ツールが身近になったので、やろうと思えば1人でアルバム1枚作れてしまうような時代でもありますよね。
音楽制作はものすごく簡単にできるようになったと思います。それによって逆に有象無象も増えたとは思いますけど。でもだからこそ、その中で頭ひとつ抜けた才能を持った人は輝いている。特にヨーロッパの若いミュージシャンにはそういう人が多いと思います。
――最近気になったミュージシャンは誰ですか?
フランスのMadeonという人です。打ち込みのダンスミュージックで、トラックもボーカルもめっちゃかっこいいんです。いわゆるエレクトロニカ系の音楽って世界にあふれてますけど、その中でもシンセサイザーの使い方やボーカルの処理の仕方にフランスっぽい響きがあって、びっくりしましたね。Madeonは1人で歌もトラックも全部やっています。
――ソロのミュージシャン同士がコラボレーションすることについてはどう思いますか?
どんどんやるべきだと思います。日本にはまだそういう感覚が根づいていない気がします。アメリカだとソロのミュージシャンがコラボレーションして、いろんな影響を周囲に生み出していくことが多いんですけどね。日本だとバンドはバンド、ソロはソロって最初から決めてしまっていることが多い印象です。
――なぜそうした感覚が日本には根づかないのだと思いますか?
ソロだと自分のイメージを持っているからあんまりコラボしたくないということなのかもしれません。コラボしてイメージが崩れてしまうのを恐れているというか。でも本質的に言うなら真逆で、自分にしっかりとしたイメージとビジョンと能力があるなら、誰とコラボしたって平気なはずなんですよね。ミュージシャン本人がコラボを避けているというよりは、周りの人間がイメージを守ろうとしているみたいな、そういう島国特有の内向きな印象を感じています。僕はどんどんコラボレーションしていきたいと思っています。
■ゲーム活動から広がるミュージシャン同士の交流
――どんなコラボレーションをしたいですか?
コラボ相手と一緒にアルバムを作って、2人とも同じ格好した2種類のジャケットで出したら面白いんじゃないかとか、いろいろ考えたりしています。コラボレーションしたい人はいろいろいますよ。ユーミンとコラボするのも夢ですし、岡崎体育とか、海外のミュージシャンとも何かできたら良いですよね。
――岡崎さんとはプライベートでも仲がいいと聞きました。どういうきっかけで知り合ったんでしょうか?
岡崎体育の番組でコメントを出させてもらったときに、その番組のディレクターさんと彼が一緒にゲームしてたんですね。「フォートナイト」っていうファンシー戦争系のゲームなんですけど、実はそのゲーム、僕がミュージシャンのなかで一番強いって公言してるやつだったんですよ。そういうこともあって一緒にゲームするようになって、そこに夜の本気ダンスの鈴鹿秋斗さんとかw-inds.の橘慶太さんとかも加わって、ミュージシャンのゲーム仲間ができあがっていきました。
――みなさんで家に集まることもあるんでしょうか?
いや、集まることはほとんどないです。ゲームは基本的にオンラインでやっているので、みんなそれぞれ自宅にいることが多いです。オンラインなのでどこにいてもできるんですよ。自分のバックバンドのメンバーと一緒にゲームすることもあるんですけど、リハ終わったら「このあと一緒に遊びに行こう!」っていう感覚ですぐに解散するんです。で、みんな自分たちの家に帰って、オンラインのロビーに集まってゲームをやる。
――ゲーム中に音楽の話をすることはありますか?
ぜんぜんないですね。完全に遊んでる感覚なので、基本的にはふざけてしゃべってるだけです。
――ゲームでの体験が音楽制作にフィードバックすることはないのでしょうか。
直接的に影響を受けることはないですね。ま、「Get Physical」という曲のミュージックビデオで、ゲームのプレイ動画を混ぜた映像を作ったことはありますけど。ゲームの体験を音楽に持ち込もうと考えると疲れるので、基本的にはとにかく遊び尽くしてます。
■音楽のルールに囚われず"悪魔"のように制作した新譜『Devil』
――これまでアルバムには収録できなかった、未発表曲というのはどのくらいあるのでしょうか?
僕は"捨て曲"がほとんどないんですよね。『Devil』には11曲入っているんですけど、今回もちょうど11曲しか作っていない。100曲とか大量に作ってディレクターに選ばせるのって嫌じゃないですか(笑)。"捨て曲"のために無駄な時間を過ごしたくないですし、発表する曲だけのためにぜいたくに時間を費やしたいです。
――前作『wizard』が「魔法使い」といった意味のタイトルだったのに対し、今作『Devil』は「悪魔」という意味のタイトルです。どのような心境の変化があったのでしょうか。
タイトルはいつも曲がそろってから最後に付けています。で、『wizard』のときに比べると、今回は縛りなく好き放題に作ったという感じがありました。『wizard』のときは「よし、アルバムを作るぞ」って気合いを入れていたんですが、今回はいい意味でまったくそれがなかった。音楽のルールを意識せず、守らず、好き勝手に作ったっていうのは、悪魔的だよなと思って、『Devil』にしました。
――『Devil』の中でも注目の楽曲はやはり「Ca Va?」だと思います。昨年SpotifyのTVCMタイアップでも話題になりましたが、ヒットの予感はありましたか?
ヒットする予感はまったくありませんでした。Spotifyさんに「めっちゃくちゃ面白い曲を作ってください」って頼まれたので、だったら「これはやりすぎ! もっと普通の曲にして!」って言わせてやろうと思って作ったのが「Ca Va?」なんです。けれどもできあがってからSpotifyさんに聴かせたら、大笑いしながら「最高だ!」って言ってもらえて。音楽フェスでも「『Ca Va?』が聴きたい!」ってみんなが言ってくれて、いつの間にか曲が勝手に話題になっていった。自分の中でも想定外な成長をした曲だと思いますね。
――「Ca Va?」には耳に残るフレーズや踊りたくなるリズムがありますけど、「フロアを沸かせる曲」として狙ったところはありましたか?
「Ca Va?」に限らず、フロアを沸かせようと思って曲を作ったことがないですね。もちろん最終的に盛り上がったらうれしいんですけど、それは自分がツアーなりライブをやっていくなかで初めて気づくことなので。むしろライブで盛り上がるためにここにコール&レスポンスのパートを入れようとか、そういうことを制作時に考えるのは邪念に感じるんですよ。とにかく自分が面白いと思う曲を作って、それを披露したら結果的にみんなが声を出してくれることもある、そういった発見を楽しんでいます。
――「Ca Va?」を制作するにあたって意識したミュージシャンはいましたか?
特にいませんでした。他の曲だとエルトン・ジョンとかクイーンとかマイケル・ジャクソンとか、いろんなフレーバーを自分でも意識しながら作っているんですけど、「Ca Va?」に関しては特になかったんです。
――『Devil』には、アニメ『ブラッククローバー』のオープニング曲として書き下ろされた「Black Catcher」も収録されています。2018年の「Black Rover」に続き2回目のオープニング曲ですよね?
実は自分から立候補したんです。製作委員会の人に「やらせてください!」ってアピールして。『ブラッククローバー』のオープニングテーマはおおよそ10話おきに代わるんですけど、幸い自分が担当した「Black Rover」が他のテーマソングに比べて人気があった。なので製作委員会の人からも「ビッケブランカさんの曲がアニメの認知度を上げてくれている」「ぜひやってください」と言われて、請け負うことができました。
――他の楽曲とは違う、アニメ音楽の特徴は何だと思いますか?
アニメの曲は、勢いがあって騒がしいイメージがありますね。ギターが左右のスピーカーから鳴って音を埋めて、力強い感じというか。そういう曲調は実はあまり好きじゃないんです。女性歌手が圧倒的なテクニックで歌うのは大好きなんですけど、ロックバンドがオープニング曲をやるとだいたい一辺倒になってしまう。とはいえ、そういった傾向を変えるために自分らしさを出そうとは気張らず、アニメのことを考えてナチュラルに作ったら他と違う曲になった、っていうのが理想です。
――好きなアニメ音楽はありますか?
『幽☆遊☆白書』の主題歌の「微笑みの爆弾」ですね。大名曲です。子供のころにアニメを見ていて知った曲です。
――音楽活動を始めてから気になったアニメ音楽はありますか?
『デュラララ!!』の主題歌「裏切りの夕焼け」が好きです。THEATRE BROOKというバンドの曲です。池袋に住んでいたころ、外国人の友達から「池袋が舞台のアニメがあるんだぜ」って教えてもらって。それで見てみたら、オープニング曲が渋くて、他のアニメとは一線を画すような玄人っぽい曲でガツンとやられました。僕はそれがきっかけでTHEATRE BROOKを知ったんです。
――最近だと『君の名は。』や『天気の子』といった新海誠作品でRADWIMPSが音楽を担当したことも話題になりました。RADWIMPSはどうですか?
もちろんRADWIMPSはとても好きですよ。でも、好きだから僕は聴かないようにしてるところもあるんです。みんながRADWIMPSを聴いていたら、RADWIMPSみたいなバンドばかりになってしまいますよね。どんどん曲が似てきてしまう。
――好きだからこそ避ける、というのは面白いですね。
単に好きというだけではなくて、明らかにはやった音楽はなるべく聴かないようにしています。Mr.Childrenやビートルズも絶対に自分では聴かないようにしています。そういう人たちの才能には強い影響力があるから、感化されてしまわないようにしているんです。
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■ビッケブランカ
愛知県出身。シンガーソングライターとして活動。2016年にミニアルバム『Slave of Love』でメジャーデビュー。2017年にファーストアルバム『FEARLESS』を、翌2018年にセカンドアルバム『wizard』をリリース。2020年3月4日に1年4カ月ぶりの新譜となるサードアルバム『Devil』をリリース。
■トレンドニュース「視線の先」 ~築く・創る・輝く~
エンタメ業界を担う人が見ている「視線の先」には何が映るのか。
作品には、関わる人の想いや意志が必ず存在する。表舞台を飾る「演者・アーティスト」、裏を支える「クリエイター、製作者」、これから輝く「未来のエンタメ人」。それぞれの立場にスポットをあてたコーナー<視線の先>を展開。インタビューを通してエンタメ表現者たちの作品に対する想いや自身の生き方、業界を見据えた考えを読者にお届けします。
(取材・文/細田成嗣@HEW)
(撮影/ナカムラヨシノーブ)

シンガーソングライター・ビッケブランカ
■「誰にも負けないことを一つ見つけて、それで生きていけ」
――ミュージシャンになろうと思ったきっかけを教えてください。
「誰にも負けないことを1つ見つけて、それで生きていけ」って親に言われて育ったんです。なので小学生のころから、他人に負けないものは何だろうとずっと考えて生きていました。好きなことでも自分が1番になれないとわかったらあきらめることもありました。それでふと、ずっと誰にも負けなかったもの、自分が1番頼りにされているものは何だろうと考えてみたら、音楽だったんですね。
――ミュージシャンを目指したというよりも、ミュージシャンという選択肢しか考えていなかったということですか?
はい。いまも子供のころの延長でしかないんです。「ミュージシャンになろう!」って目標を掲げたことはいちどもありませんでした。曲を作って家族に聴かせることの延長として、今たまたま大勢の方々に聴いていただいている、という気がします。
――音楽にまつわる、何か印象に残っている出来事はありますか?
自分が音楽に向いていると確信できたきっかけが、少なくとも2つありました。1つは母親の誕生日に作曲して、演奏したら泣いて喜んでもらえたこと。もう1つは中学生の時に合唱コンクールで圧勝したことです。ただ、何か決定的なきっかけがあったというよりも、日常の中で感じたことの積み重ねがいつの間にか確信に変わっていったのだと思います。

「誰でも絶対に1つは秀でたものがあると思う」
――音楽をなりわいにしたいという以前に、自分が音楽に向いていることを発見した、ということでしょうか。
誰でも絶対に1つは秀でたものがあると思うので、それを見つけられるかどうかが重要だと思うんですよね。自分が好きなことに固執してやり続けるのではなくて、本当に向いていること、やるべきことを見つけられるかどうか。若い人たちから取材を受けたときは、それを間違えずに見つけてほしいといつも伝えています。
――音楽に向いているとひとくちに言っても、ビッケブランカさんの場合は作詞や作曲/編曲から歌/演奏まですべてご自身で行っています。
そうですね。僕は1人の人間がどこまでできるのかを追求するのが好きなんです。スポーツも個人競技に魅力を感じるんですよね。100メートルをどれだけ速く走れるか、とか。団体競技でも孤高の存在に興味があります。実は僕は元メジャーリーガーのイチロー選手と地元が一緒で、実家も近所で小中学校も同じなんですけど、彼はチームのなかで彼にしかできないことを黙々とやっていますよね。そういうことをかっこいいと思う感覚が根っこにあるので、ソロで音楽活動をしている人を尊敬していますし、僕自身も1人でやりたいと思っています。

「僕は1人の人間がどこまでできるのかを追求するのが好きなんです。」
――最近は音楽制作ツールが身近になったので、やろうと思えば1人でアルバム1枚作れてしまうような時代でもありますよね。
音楽制作はものすごく簡単にできるようになったと思います。それによって逆に有象無象も増えたとは思いますけど。でもだからこそ、その中で頭ひとつ抜けた才能を持った人は輝いている。特にヨーロッパの若いミュージシャンにはそういう人が多いと思います。
――最近気になったミュージシャンは誰ですか?
フランスのMadeonという人です。打ち込みのダンスミュージックで、トラックもボーカルもめっちゃかっこいいんです。いわゆるエレクトロニカ系の音楽って世界にあふれてますけど、その中でもシンセサイザーの使い方やボーカルの処理の仕方にフランスっぽい響きがあって、びっくりしましたね。Madeonは1人で歌もトラックも全部やっています。
――ソロのミュージシャン同士がコラボレーションすることについてはどう思いますか?
どんどんやるべきだと思います。日本にはまだそういう感覚が根づいていない気がします。アメリカだとソロのミュージシャンがコラボレーションして、いろんな影響を周囲に生み出していくことが多いんですけどね。日本だとバンドはバンド、ソロはソロって最初から決めてしまっていることが多い印象です。

「どんどんコラボレーションしていきたい」
――なぜそうした感覚が日本には根づかないのだと思いますか?
ソロだと自分のイメージを持っているからあんまりコラボしたくないということなのかもしれません。コラボしてイメージが崩れてしまうのを恐れているというか。でも本質的に言うなら真逆で、自分にしっかりとしたイメージとビジョンと能力があるなら、誰とコラボしたって平気なはずなんですよね。ミュージシャン本人がコラボを避けているというよりは、周りの人間がイメージを守ろうとしているみたいな、そういう島国特有の内向きな印象を感じています。僕はどんどんコラボレーションしていきたいと思っています。
■ゲーム活動から広がるミュージシャン同士の交流
――どんなコラボレーションをしたいですか?
コラボ相手と一緒にアルバムを作って、2人とも同じ格好した2種類のジャケットで出したら面白いんじゃないかとか、いろいろ考えたりしています。コラボレーションしたい人はいろいろいますよ。ユーミンとコラボするのも夢ですし、岡崎体育とか、海外のミュージシャンとも何かできたら良いですよね。
――岡崎さんとはプライベートでも仲がいいと聞きました。どういうきっかけで知り合ったんでしょうか?
岡崎体育の番組でコメントを出させてもらったときに、その番組のディレクターさんと彼が一緒にゲームしてたんですね。「フォートナイト」っていうファンシー戦争系のゲームなんですけど、実はそのゲーム、僕がミュージシャンのなかで一番強いって公言してるやつだったんですよ。そういうこともあって一緒にゲームするようになって、そこに夜の本気ダンスの鈴鹿秋斗さんとかw-inds.の橘慶太さんとかも加わって、ミュージシャンのゲーム仲間ができあがっていきました。
――みなさんで家に集まることもあるんでしょうか?
いや、集まることはほとんどないです。ゲームは基本的にオンラインでやっているので、みんなそれぞれ自宅にいることが多いです。オンラインなのでどこにいてもできるんですよ。自分のバックバンドのメンバーと一緒にゲームすることもあるんですけど、リハ終わったら「このあと一緒に遊びに行こう!」っていう感覚ですぐに解散するんです。で、みんな自分たちの家に帰って、オンラインのロビーに集まってゲームをやる。

「(ゲームは)とにかく遊び尽くしてます。」
――ゲーム中に音楽の話をすることはありますか?
ぜんぜんないですね。完全に遊んでる感覚なので、基本的にはふざけてしゃべってるだけです。
――ゲームでの体験が音楽制作にフィードバックすることはないのでしょうか。
直接的に影響を受けることはないですね。ま、「Get Physical」という曲のミュージックビデオで、ゲームのプレイ動画を混ぜた映像を作ったことはありますけど。ゲームの体験を音楽に持ち込もうと考えると疲れるので、基本的にはとにかく遊び尽くしてます。
■音楽のルールに囚われず"悪魔"のように制作した新譜『Devil』
――これまでアルバムには収録できなかった、未発表曲というのはどのくらいあるのでしょうか?
僕は"捨て曲"がほとんどないんですよね。『Devil』には11曲入っているんですけど、今回もちょうど11曲しか作っていない。100曲とか大量に作ってディレクターに選ばせるのって嫌じゃないですか(笑)。"捨て曲"のために無駄な時間を過ごしたくないですし、発表する曲だけのためにぜいたくに時間を費やしたいです。

「音楽のルールを意識せず、守らず、好き勝手に作った」
――前作『wizard』が「魔法使い」といった意味のタイトルだったのに対し、今作『Devil』は「悪魔」という意味のタイトルです。どのような心境の変化があったのでしょうか。
タイトルはいつも曲がそろってから最後に付けています。で、『wizard』のときに比べると、今回は縛りなく好き放題に作ったという感じがありました。『wizard』のときは「よし、アルバムを作るぞ」って気合いを入れていたんですが、今回はいい意味でまったくそれがなかった。音楽のルールを意識せず、守らず、好き勝手に作ったっていうのは、悪魔的だよなと思って、『Devil』にしました。
――『Devil』の中でも注目の楽曲はやはり「Ca Va?」だと思います。昨年SpotifyのTVCMタイアップでも話題になりましたが、ヒットの予感はありましたか?
ヒットする予感はまったくありませんでした。Spotifyさんに「めっちゃくちゃ面白い曲を作ってください」って頼まれたので、だったら「これはやりすぎ! もっと普通の曲にして!」って言わせてやろうと思って作ったのが「Ca Va?」なんです。けれどもできあがってからSpotifyさんに聴かせたら、大笑いしながら「最高だ!」って言ってもらえて。音楽フェスでも「『Ca Va?』が聴きたい!」ってみんなが言ってくれて、いつの間にか曲が勝手に話題になっていった。自分の中でも想定外な成長をした曲だと思いますね。

「フロアを沸かせようと思って曲を作ったことがない」
――「Ca Va?」には耳に残るフレーズや踊りたくなるリズムがありますけど、「フロアを沸かせる曲」として狙ったところはありましたか?
「Ca Va?」に限らず、フロアを沸かせようと思って曲を作ったことがないですね。もちろん最終的に盛り上がったらうれしいんですけど、それは自分がツアーなりライブをやっていくなかで初めて気づくことなので。むしろライブで盛り上がるためにここにコール&レスポンスのパートを入れようとか、そういうことを制作時に考えるのは邪念に感じるんですよ。とにかく自分が面白いと思う曲を作って、それを披露したら結果的にみんなが声を出してくれることもある、そういった発見を楽しんでいます。
――「Ca Va?」を制作するにあたって意識したミュージシャンはいましたか?
特にいませんでした。他の曲だとエルトン・ジョンとかクイーンとかマイケル・ジャクソンとか、いろんなフレーバーを自分でも意識しながら作っているんですけど、「Ca Va?」に関しては特になかったんです。
――『Devil』には、アニメ『ブラッククローバー』のオープニング曲として書き下ろされた「Black Catcher」も収録されています。2018年の「Black Rover」に続き2回目のオープニング曲ですよね?
実は自分から立候補したんです。製作委員会の人に「やらせてください!」ってアピールして。『ブラッククローバー』のオープニングテーマはおおよそ10話おきに代わるんですけど、幸い自分が担当した「Black Rover」が他のテーマソングに比べて人気があった。なので製作委員会の人からも「ビッケブランカさんの曲がアニメの認知度を上げてくれている」「ぜひやってください」と言われて、請け負うことができました。
――他の楽曲とは違う、アニメ音楽の特徴は何だと思いますか?
アニメの曲は、勢いがあって騒がしいイメージがありますね。ギターが左右のスピーカーから鳴って音を埋めて、力強い感じというか。そういう曲調は実はあまり好きじゃないんです。女性歌手が圧倒的なテクニックで歌うのは大好きなんですけど、ロックバンドがオープニング曲をやるとだいたい一辺倒になってしまう。とはいえ、そういった傾向を変えるために自分らしさを出そうとは気張らず、アニメのことを考えてナチュラルに作ったら他と違う曲になった、っていうのが理想です。
――好きなアニメ音楽はありますか?
『幽☆遊☆白書』の主題歌の「微笑みの爆弾」ですね。大名曲です。子供のころにアニメを見ていて知った曲です。
――音楽活動を始めてから気になったアニメ音楽はありますか?
『デュラララ!!』の主題歌「裏切りの夕焼け」が好きです。THEATRE BROOKというバンドの曲です。池袋に住んでいたころ、外国人の友達から「池袋が舞台のアニメがあるんだぜ」って教えてもらって。それで見てみたら、オープニング曲が渋くて、他のアニメとは一線を画すような玄人っぽい曲でガツンとやられました。僕はそれがきっかけでTHEATRE BROOKを知ったんです。

「明らかにはやった音楽はなるべく聴かないようにしています。」
――最近だと『君の名は。』や『天気の子』といった新海誠作品でRADWIMPSが音楽を担当したことも話題になりました。RADWIMPSはどうですか?
もちろんRADWIMPSはとても好きですよ。でも、好きだから僕は聴かないようにしてるところもあるんです。みんながRADWIMPSを聴いていたら、RADWIMPSみたいなバンドばかりになってしまいますよね。どんどん曲が似てきてしまう。
――好きだからこそ避ける、というのは面白いですね。
単に好きというだけではなくて、明らかにはやった音楽はなるべく聴かないようにしています。Mr.Childrenやビートルズも絶対に自分では聴かないようにしています。そういう人たちの才能には強い影響力があるから、感化されてしまわないようにしているんです。

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愛知県出身。シンガーソングライターとして活動。2016年にミニアルバム『Slave of Love』でメジャーデビュー。2017年にファーストアルバム『FEARLESS』を、翌2018年にセカンドアルバム『wizard』をリリース。2020年3月4日に1年4カ月ぶりの新譜となるサードアルバム『Devil』をリリース。
■トレンドニュース「視線の先」 ~築く・創る・輝く~
エンタメ業界を担う人が見ている「視線の先」には何が映るのか。
作品には、関わる人の想いや意志が必ず存在する。表舞台を飾る「演者・アーティスト」、裏を支える「クリエイター、製作者」、これから輝く「未来のエンタメ人」。それぞれの立場にスポットをあてたコーナー<視線の先>を展開。インタビューを通してエンタメ表現者たちの作品に対する想いや自身の生き方、業界を見据えた考えを読者にお届けします。
(取材・文/細田成嗣@HEW)
(撮影/ナカムラヨシノーブ)