上京20年、シンガーソングライター半崎美子が『布石』に込めた思いとは?

2020/3/11 10:34

17年の下積みを経てメジャーデビューし、今年で上京20周年を迎えた半崎美子。ショッピングモールで積み重ねた人との縁(えにし)を歌に乗せ、相手に寄り添うその歌声に人は魅了され、涙する。そんな半崎美子が3月11日にニューシングル『布石』を発売。亀田誠治氏をプロデューサーに迎えたタイトル曲の他、初のカヴァー曲『わせねでや』など、上京20周年を振り返りながら今作への思いを語ってもらった。

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シンガーソングライター・半崎美子


■私自身、たくさんの方との出会いによって救われたり報われたことは数え切れません

──今回リリースの『布石』ですが、今年で上京20周年の半崎さんならではのタイトルですね。

そうですね。歌の道に進もうと考え、住み込みで働ける場所が決まっただけで北海道から突発的に出てきた形でしたが(笑)気がつけば20年です。この曲は、その20年の間に出会ったたくさんの方それぞれの人生や軌跡みたいなものを受け取り、思いをはせながら作りました。私自身、たくさんの方との出会いによって救われたり報われたことは数え切れません。歌詞の「あなた」というのは、私自身のことでもあり皆さんのことでもあり...。そういう気持ちを込め、過去も今現在も肯定的に書いています。今まで積み重ねた日々は今日に至るまでの布石なんですよね。そして今現在は未来への布石でもあると思っています。

──上京当時は苦労も多かったのではないですか?

当時は信頼できる人がそれほどいたわけでもないので、人との繋(つな)がりも今ほど豊かではなく大変だったこともありました。だから騙(だま)されたこともありましたし、レコード会社へデモテープを届けても全然受け入れてもらえず現実の厳しさも知りました。

──歌を諦めて北海道に帰ろうと思ったことはありましたか?

いや、それが不思議なことにないんです。頭をかすめたこともなかったというか(笑)。徐々に人との繋(つな)がりも増え、まだなかなか足を止めてもらえないショッピングモールでのライヴでも、たった一人、涙しながらサイン会に並んで思いを伝えてくれた方がいて。そういうことはやはりすごく覚えていて。そういうひとつひとつの出会いがあったからこそ歌い続けてこられたと思うんです。上京してパン屋さんで務めて、最初はクラブで歌っていたんです。その後ライヴハウス、ショッピングモールと、歌う場所を広げて行ったんですが、歌う場所が変わっていったのもひとつ大きなターニングポイントだったのかもしれないですし、やはりショッピングモールで歌い始めてからは自分の中でも大きな変化がありましたね。書く曲も変わってきましたし。


■録音を聴いて涙が止まらなくなり「また泣いてるね(笑)」って笑われました(笑)

──この曲は「サクラ~卒業できなかった君へ~」以来の亀田誠治さんプロデュースですが、久しぶりのタッグはいかがでしたか?

とても刺激をいただきましたし、こういう方の下で作品作りができるのはすごく幸せなことだと改めて思いました。亀田さんにはまずピアノ弾き語りのデモをお渡しして、歌詞への思いをお伝えしたんですが、プリプロではほぼこのアレンジが出来上がっていて。最初からイメージしていたサビのタメと最後の畳み掛けを亀田さんは躍動感たっぷりに生かしてくれていました。亀田さんは本当に心の底から音を楽しんでいて、少年のような表情でうれしそうに音楽へ向かい合ってくれるんです。レコーディングでは何度も同じ部分を演奏することもありますが、常に新鮮な感覚で取り組まれて、私はその録音を聴いて涙が止まらなくなり「また泣いてるね(笑)。」って笑われました(笑)。

──曲のアレンジについてはいかがでしょうか。

イントロからすごく爽やかで、最初からこんなにキラキラしていることについて亀田さんにも聞いてみたんです。そしたらこの歌そのものの肯定感をアレンジで出してくれたようで。歌詞は重みを感じる部分もあるんですが、何か爽快さもあったりラスサビの畳み掛けるサウンドで力をもらえますし、本当に亀田さんのアレンジパワーが『布石』には絶対的に必要であり必然だと思えるようなものでした。

■この歌が大切に歌い継がれていく世の中であって欲しいという思いでいっぱいです

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「歌って元来こういうものだと感じました。」


──c/wには、東日本大震災復興プロジェクト『桂島"うた"プロジェクト』で生まれた「わせねでや」のカヴァーも収録されていますが、初めて作品でカヴァー収録することになった理由を教えてください。

この曲との出会いは、昨年3月に宮城で開催された「つながる心 つながる力 みんなでつくる復興コンサート」(以下:復興コンサート)に出演させて頂いた時でした。そこで生活を営んでいる方たちじゃないと作り得ない美しい歌が、実はたくさんあるんですよね。例えば長野県松本市のアルプス福祉会で出会った子供たちと作業所の皆さんが書いた「この街に生きて」もそのひとつですし、内海和江さんという方が避難所で書いた一篇(ぺん)の詩によって生まれた、この「わせねでや」もそういう曲です。歌って元来こういうものだと感じました。復興コンサートでは仙台フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、仙台南高等学校音楽部合唱団の皆さんと一緒にこの曲を歌ったんですが、この曲こそ伝えていくべきだと思い、私自身が作品の中に入れることで、少しでも多くの方に届けることができればという気持ちが湧き上がったので、今回初めてカヴァーを収録しました。私、今まで自分の作品にカヴァーを入れることは考えたことはなかったんです。勿(もち)論好きな曲はたくさんあるし、ライヴでもたまに歌うこともありますが、今回はどうしても入れたいと思ったんです。

──そこにある物語や意味を強く感じました。

この「わせねでや」って、"忘れないで"を意味する方言なんですが、この歌が大切に歌い継がれていく世の中であって欲しいという思いでいっぱいです。

──昨年開催された『うた弁2』発売記念コンサートツアー2019『銀河鉄道39 ~きらり途中下車の旅~』も『布石』と同日リリースされるんですよね。

はい。皆さんのおかげであのコンサートはかけがえのないものになりました。

──コンサートタイトルがすてきですね。

ありがとうございます。タイトルの『銀河鉄道39 ~きらり途中下車の旅~』をテーマに掲げたのはすごく意味がありました。私自身が出会ってきた方たちの思いを受け取ったり対話をしてきた中で生まれた曲がたくさんあって、そういう、それぞれに意味合いある曲たちを旅していくものでもありましたし、今ここにいない人とともに旅をするようなコンサートでもあったので、コンサートが終わり振り返ってみると、コンサートに来てくれた方は勿(もち)論、もういなくなってしまった方とも繋(つな)がっている感覚になりました。

──最後に、半崎さんの座右の銘を教えてください。

「全ては肥やしになる」です。17年下積みとよく言っていただくのですが、自分自身では下積みと感じたことは一度もなく、なくてはならない17年で、一日も無駄な日はなかったと思っています。全てが肥やしになって、おかげで豊かな土壌に根を張る事ができました。

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半崎美子


【GYAO!動画】20年間の思いを込めた半崎美子作品『布石』ミュージックビデオ>>

■半崎美子(はんざき・よしこ)
北海道の大学を中退し単身上京。パン屋に住み込みで働きながら音楽活動を開始。「ショッピングモールの歌姫」として数々のメディアでも取り上げられ、2017年メジャーデビュー。NHKみんなのうた4-5月「お弁当ばこのうた~あなたへのお手紙~」や、「サクラ~卒業できなかった君へ~」など収録のメジャー1stミニアルバム『うた弁』はロングヒットとなり、第50回日本有線大賞新人賞を受賞。天童よしみさんへの楽曲提供で話題となった「大阪恋時雨」は第70回NHK紅白歌合戦でも歌われた。

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(取材・文・写真/秋山雅美(ポップシーン))