人気放送作家・高須光聖の頭の中「人間味が出たときの面白さをコンテンツにしてきた」

2020/3/17 15:00

人気放送作家・高須光聖氏の活躍は、『水曜日のダウンタウン』『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』『ロンドンハーツ』といったテレビ番組にとどまらない。ラジオのパーソナリティを務め、小説にも挑戦。web番組も手掛けるなど、さまざまな形で自身が面白いと思うものを作り続けている。


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放送作家・高須光聖


高須光聖企画【食事・睡眠・トイレも車内】カップルたちの過酷な車中旅に密着するリアルドキュメンタリー番組>>

長きに渡りコンテンツを供給し続けるクリエイターの頭の中はどうなっているのか? テレビとネット、どちらが番組を作りやすいか? 小学校時代からの親友・松本人志に対する思いとは? 高須氏に話を聞いた。

■テレビは視聴者と共犯意識が生まれる

――高須さんといえばダウンタウンの番組に代表される"テレビのバラエティ番組"を作っている人というイメージですが、ラジオや映画、アニメの脚本など活動の幅は多岐に渡っています。最近ではweb番組も作られていますが、そうした「プラットフォームの違い」はどの程度意識して活動されていますか?

「それが、あんまりないんですよね。プラットフォームによってルールが違うというだけで、その中で面白いことやればいい。地上波はいろいろうるさいって言われますけど、例えば音楽の使いやすさなど、地上波のほうがやりやすいこともある。それぞれでメリット/デメリットはあるんですよ。面白い企画が料理だとするなら、『どこが1番美味しそうに見える器かな?』と考えることはありますが、どのプラットフォームが楽しい、ということはないですね」


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「『あっち行くな』って言われるから行ってみたくもなる。」


――「ルールの中、制約の中で作る楽しさ」というものはあると思います。高須さん的にはルールが厳しい方とより自由に作れる方、どちらがやりやすいですか?

「そりゃ変な制約がない方が作りやすいですけど、でもずっと自由に作ってると、どっちに進んでいいか分からなくなったりもするんですよね。『あっち行くな』って言われるから行ってみたくもなる。悪があるから正義の本質が分かるみたいな、何もダメなものがない方が考えづらい、行動しづらいというのはあると思います。だから何か決まりごとがあると案外楽ですよね。何もなく『自由に遊びなさい』と言われるより、『あそこにある池に行っちゃダメ』『あの繁華街に入っちゃダメ』と言われたほうがなんとなく面白味が生まれる。『行ってみたらどうなる?』という気持ちの揺れや人間っぽさが生まれ出てくるので、"その人間っぽさが出たところで何が面白いか"をコンテンツにするみたいなところはあります」


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「テレビって面白くて、視聴者と共犯意識みたいなものが生まれるんですよ。」


――最近、カジサックさんを筆頭にYouTuberになる芸人さんも増えています。彼らは逆に、「より自由度が高い/好きなことができるほうに活路を見いだした」という印象です。

「そこは"プレイヤー"だからというのが大きいんじゃないですかね。やっぱり、プレイヤーの人は全部の時間を自分で埋めたい、100%の自分を出したいというのがあると思います。番組の一部ではなく、自分をメインに置きたい、ど真ん中に自分がいるコンテンツを持ちたいという意味ではYouTubeはすごく良いでしょうね。僕は演者ではなく、番組を作る側なので、テレビにはテレビのやり方があるし、ネットにはネットのやり方があると思っています。『テレビだけを愛してる! テレビじゃないとダメ!』みたいな気持ちもなければ、テレビがやりづらいというのもない。ネットで面白いことやったら、多分テレビも引っ張られるだろうし。

テレビって面白くて、視聴者と共犯意識みたいなものが生まれるんですよ。コンプライアンスという言葉をよく聞くようになったじゃないですか。テレビも開局70年近く経って来ると、世の中の人がテレビのルールを意外と知っていて、コンプライアンスのラインを分かっているんです。そのコンプライアンスのラインのちょい手前、いわゆる落ちるスレスレを企画にすると、『これって大丈夫!?』って勝手に盛り上がってくれる(笑)。『そこまで行ったらアウトじゃない?』というのを楽しんでくれる人も増えてくるんですよね。境界線にある笑いを企画にどんどんしているのが『水曜日のダウンタウン』だったりもするんじゃないですかね(笑)」

■笑いとは「目の前の人にチューニングを合わせる作業」

――それではweb番組ならではの面白さというのはどういうものだとお考えですか?

「やっぱり制約の少なさには制約の少なさなりの面白さがあります。もちろんwebにもコンプライアンスはあるし、本当に自由なわけではないんですけど、面倒なこと、ややこしいことは少なくなりますよね。尺が自由だったり、収録の撮れ高で配信回数を増やせたり、スピード感も増して、そういう意味じゃ、めちゃくちゃフレキシブルですよね。」


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「今と昔でできること、面白いことは違う。」


――より自由にできる中で、せっかくwebでやるんであれば、テレビではできない、テレビでは取り上げない部分をやろうという意識はありますか?

「もちろんあります。テレビで切り取るところじゃない部分も面白いのにな~とか、テレビでできないような部分にも面白いことはいっぱい転がってるのにな~という思いですよね。僕はテレビでも好きなことをやらせてもらってきたので、『テレビではできないという思いを抱えてきた』みたいな悲壮感は全然ないんですけど(笑)、ただどうしても作品を仕上げるまでに『ここはカット』とか『ここはそういうのナシで』というのは生まれますよね。そうなると、『これ面白いのにな~』というものが自分のゴミ箱にたまってくる。でもそれって実は宝物だったりもしますしね。

もちろんそれを全部表現したいという思いを抱えているわけじゃないですよ。当然、今と昔でできること、面白いことは違うので、『これはもうないわ』というのももちろんたくさんありますし」

――コンプライアンスの話もそうなんですけど、時代ごとで「面白い/面白くない」とか「NG/NGじゃない」はありますよね。そこを見誤ると大変なことになったりする。作り手としてそれは常に意識するものなのでしょうか。

「友達にミュージシャンのトータス松本がいるんですけど、トータスが『普遍的で、いつまでも色褪せることのなく、時代に流されない歌を作りたい』って言うんですよ。『ミュージシャンは自分がいいと思うものを時代に流されずに作る』と言われたときに、僕はそれをミュージシャンだからこその感覚だって思ったんです。


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「笑うって難しいですよね。」


笑いでそれは難しい。笑ってくれる/笑ってくれないというはっきりした"リトマス試験紙"が目の前にある以上、笑いとは目の前の人に対してどうなのかとチューニングを合わせる作業だと思うんですよ。だから今と10年前で感覚も違ってくる。お笑いの人は常に、"笑えるネタじゃなくなる"ことと戦っています。ラグビーで盛り上がった頃とコロナで外出できない今とでは笑えるものが確実に違うんですよ。世の中の人がどんな気持ちでいるのか、その空気のようなものですごく左右されちゃうんですよね。

――確かに、笑いってナイーブですよね。

「絶対そうだと思います。笑うって難しいですよね。心の余裕、守られた安堵(あんど)感の中にも、わずかな緊張感や違和感がないと笑うまでに至れへんから......難しい」

――売れている芸人さんは、そのチューニングがちゃんとできてるんですね。

「僕らはさておき、芸人さんは常に客前でしゃべってるから、体が勝手にチューニングしているんだと思うんですよね。一言二言放っただけで、『あっこれはウケへんな』とか『ここでこれ言ったら空気壊れる』というその場の雰囲気を読む力がすごいですよ、あの人たちは。常に肌で何かを感じながら、瞬時に言葉を微調整しながら、笑える話へと構築していく。僕らも作り手として、芸人さんほどではないですけどチューニングは必要です」

■テレビで見るプロよりも小学生の松本人志のほうが面白かった

――高須さんはドキュメンタリー番組の構成なども手掛けられてますが、やはり「エンターテインメント」の主軸は「笑い」だと思いますか?

「僕はそもそものスタートがダウンタウンと一緒だったので、どうしても『エンターテインメント=笑い』に直結しちゃうんですよね。子供の頃から、笑ってくれるとうれしいというのが自分の本質な気がします。人が笑ってくれるのが快感なんです。


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「笑いは『最も平和的に、人の心を瞬時に支配できる武器』だと思うんです。」


僕、笑いは『最も平和的に、人の心を瞬時に支配できる武器』だと思うんですよ。笑ってしまった時点で、全部許さざるを得ないところないですか?例えばアンチばっかりが集まってる大集会があったとしますよね、そこで大ブーイングが起こって、怒号が飛び交っても、面白いこと一言言われて、クスッとでも笑ってしまったら、もう心を支配されてるんですよね。不思議なマウントの取られ方ですけど、心を持って行かれたという時点で負けですから。
一言で笑って、瞬殺ってこともありますからね(笑)腕力じゃこうはいかないですから。

子供の頃に、隣にダウンタウンがいたのは大きいですよね。なんであんな面白いこと言えるのかなって考えたし、そいつを笑かしたいとも思ったし」

――やはりダウンタウンは他の人とは違ってましたか。

「全然違いましたね。松本人志なんかはもう考えてることのレベルが全然違いました。これはよくする話なんですが、小学校5年生のときに、学年100人の前でみんなで出し物をする機会があったんです。当時僕らの中には、学校の先生のネタなど、漫才をする人が結構いたんですが、松本の漫才は次元が違った。僕らの地元は尼崎の潮江という町なんですけど、そこに2軒しかない"熊谷"と"糸田川"という歯医者の先生同士が町でばったり会ってケンカになるという漫才をやりだしたんです。それがメチャクチャ面白いんですよ。なんでそんなに面白かったかというと、今思えば設定がすごいんですね。小さい町だから、子供はみんなどっちかの歯医者に絶対行ってるんですよ。だから熊谷のおっさんの顔も知ってるし、糸田川のおっさんの顔も知ってる。当時、熊谷が若干暗い歯医者で、糸田川がシュッとした奇麗な歯医者やっていうのも分かってる。そんなことをわざわざ話題にしたことはなかったけど、でもみんな共通認識として持っているんです。今で言う"あるあるネタ"ですよね。それを歯医者同士がお互い、ケンカの中で連発してくるから、みんな面白くてしょうがない」


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「浜田も面白かったですけど、松本はすごかったですね。」


――そんな"あるある"を言い合うフォーマットなんて、当時はもちろんないですよね。

「ないですよ。小学生でそんなネタ作れないですよ。やっぱりすごいなって思いました。そのときは落ち込みましたね、小学生なりに。すごいな、あんなこと言われへんなぁと思ったんです。なんであんなに面白いんだろうって。浜田も面白かったですけど、松本はすごかったですね。でも、まだそいつがそんな天才だとまでは思ってないので、僕も松本を笑わせたいとは思いますよね。そこで普通に遊んでいる中で、なんとなく面白いことを共有していったんでしょう。だから松本がいなかったら、お笑いやエンタメに興味がなかったかもしれないですよね」

――当時から今までの間に、面白いコンテンツを山ほど見てきたと思いますが、その中でも松本さんは別格でしたか?

「うん、本当にそうですよ。プロなんかよりも隣にいる友達のほうが面白いっていう現象がそこにあったんです。」

■同棲(どうせい)経験のないカップルが車内で同棲(どうせい)することになるとどうなるか?

――今回GYAO!で新たな企画『完全車内同棲 LOVEドライブ』が始まりますね。

「カップル3組が3台の車に乗ってレースするんですけど、ルールはただ一つ、スタートからゴールまでの間車から一歩も出ちゃいけないということなんです。カーナビもスマホもなし、車内だけで生活しながらゴールを目指す。賞金をかけたレースでありながら、限界への挑戦でもあります。

過酷な状況の中、人間性が出ますよね。しかもカップル。男女が初めて見せる顔は面白い。2人に余裕があると、いい部分しか見ずに『幸せだ』って言えるんですけど、車の中から1歩も出れずに1日いたら......みんなストレスたまってくると思うんですよ。最初はキャッキャ楽しくやっていた男女が、カメラが回ってるにもかかわらずどんどん変化していくんですよね。けんかもするし、もちろんカーテンで見えないですけど排泄(はいせつ)行為もしなきゃいけない。睡眠も、性の部分も、排泄(はいせつ)も、同じ車内で行われる。人に見せるわけじゃないけど、みんな必ずやってる人間味の部分ですよね。人間味のある瞬間がやってくると、やっぱり女性も男性も面白い顔します。3日間ぐらいの間ですけど、カップルがどんどん変わっていく様は面白いですね」


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「日本人優しいな~と思って。」


――ハプニングというか、予想していなかったようなこともあったりしましたか?

「車から出られないので、ご飯も人にお願いしないといけないし、地図もないので道も聞かなきゃいけない。だから窓から外の人に話しかけて、「すみません」といろんなことをお願いしなくちゃいけないんですね。カップ麺もわざわざ買ってきてもらうだけではなく、「お湯を入れてもらって持って来てください」なんて頼まなきゃいけないんですが、案外みんなやってくれるんですよ」

――(笑)

「日本人優しいな~と思って。みんな良い人なんですよ。それがびっくりしましたね。まあ、その中でもいろいろエピソードはあったんですが、あんまり語らん方が......。でも、人の顔がどんどん変わっていくのは本当に面白いですよ」


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高須光聖


高須光聖企画【食事・睡眠・トイレも車内】カップルたちの過酷な車中旅に密着するリアルドキュメンタリー番組>>

■高須光聖(たかす・みつよし)
1963年12月24日生まれ。
ダウンタウン松本人志に誘われ24歳で放送作家デビュー。
『ガキの使いやあらへんで』、『ロンドンハーツ』、『水曜日のダウンタウン』、『IPPONグランプリ』大晦日の『笑ってはいけないシリーズ』など、バラエティー番組を中心に、現在も十数本のレギュラー番組を担当。その他にTOKYO FMでラジオパーソナリティーを現在も務め、映画の脚本、アニメの原作まで、その活動の幅は多岐にわたる。

■トレンドニュース「視線の先」 ~築く・創る・輝く~
エンタメ業界を担う人が見ている「視線の先」には何が映るのか。
作品には、関わる人の想いや意志が必ず存在する。表舞台を飾る「演者・アーティスト」、裏を支える「クリエイター、製作者」、これから輝く「未来のエンタメ人」。それぞれの立場にスポットをあてたコーナー<視線の先>を展開。インタビューを通してエンタメ表現者たちの作品に対する想いや自身の生き方、業界を見据えた考えを読者にお届けします。

(取材・文/大木信景@HEW
(撮影/ナカムラヨシノーブ)