世界で注目されるアイヌの木彫り作家、新たな"カムイ"に挑む『情熱大陸』

2020/5/29 17:16

いま先住民アイヌが注目を集めている。いわゆる「アイヌ新法」の成立だけでなく、直木賞受賞作『熱源』や漫画『ゴールデンカムイ』により、多くの人がその文化の多様さや親しみやすさ、そして自然との共存を模索するその精神性に魅せられている。

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『情熱大陸』アイヌの木彫り作家・貝澤徹


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北海道、日高地方平取町に位置する二風谷でコツコツと木を彫り続ける貝澤徹はそんなアイヌの歴史を継ぐ一人だ。家業として子熊の世話と典型的な土産物の制作に励んでいた貝澤の人生は、曽祖父ウトレントクの作品や、アメリカンポリス姿とハーレー・ダビッドソンで貝澤の前に現れた木彫家・藤戸竹喜ら、独創的な先人との出会いを機に変化し始める。

以降、それまで正面から取り組むことのなかった自らのアイデンティティと向き合い始めた貝澤は、伝統工芸技術を駆使しつつ民族や故郷に対する愛着と葛藤を現代的な感性で表現する、伝統と革新のハイブリッドな表現者へと進化してきた。技術的洗練と精神性の融合から生まれたその作品群は、今や大英博物館だけでなく、カナダ、スコットランド、アメリカなど世界各地で人々を魅了している。

しかしながら、マイケル・ジャクソンやクイーン、イーグルスを愛し、冗談好きな貝澤は、
「僕、アイヌ語わからないんです」と人懐っこい笑顔と独特の笑い声を上げながら、あっけらかんと言う。アイヌが食した「いなきび」の調理方法も、詳しくはよく分からない。貝澤にとって、「アイヌ」は、家族の歴史と生活の一部でありながら、その複雑な歴史の中で完全な形では伝えられてこなかった「自分の中に潜む他者」でもある。だからこそ貝澤は、この現代においてアイヌとは何なのかと問い続け、その迷いと葛藤が人の心を揺さぶるのだろう。

今回、北海道白老町にて2020年春にオープンが予定されていた「ウポポイ(民族共生象徴空間)」に合わせ依頼された大作、火の神「アペフチカムイ」の像は、貝澤にとって初の人物造形への挑戦である。「いつになったら"アイヌ木彫家"じゃなく、(ただの)"木彫家"って呼ばれるんだろう」と呟(つぶや)く、一人のアイヌ(=人間)、貝澤徹の迷いと格闘の日々を追う。

■貝澤徹(かいざわ・とおる)
1958年、北海道平取町二風谷にて三人兄弟の長男として生まれる。
高校を卒業後に家業の木彫りを始め、アイヌの伝統的技法を取り入れながら、木彫りによってアイヌ民族としての現代的意識や葛藤を表現。
代表作『アイデンティティ』シリーズや『ウコウク/輪唱』では伝統工芸にとどまらない表現にも挑戦し、
2018年フクロウの卵からの孵化(ふか)を型取り、次世代への思いを託した『ケウトゥムカンナスイ/精神再び』が大英博物館に常設展示されるなど、今、国内外から大きな注目を浴びている。

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(文/トレンドニュース編集部)