村上虹郎、"普通"を追い求めた過去を振り返る「母親が玄米しか食べさせてくれなかったから(笑)」
2021/8/20 15:00
今年24歳になった村上虹郎。8月20日より公開の映画『孤狼の血 LEVEL2』では、殺伐としたヤクザの世界でそれぞれの思惑に翻弄(ほんろう)されるチンピラのチンタ役を熱演。主人公の刑事・日岡役を演じる松坂桃李、極悪非道のヤクザ・上林役を演じる鈴木亮平たちに負けず劣らずの存在感を放っている。ブレイクの最中にあってもマイペースを崩さない村上は、自身のこれまでの軌跡をどのように捉えているのだろうか?
村上虹郎が出演する映画『孤狼の血 LEVEL2』GYAO!特集サイト>>
■「新人」と呼ばれる時期は過ぎ、「やっと」という感覚
――『孤狼の血 LEVEL2』では、前作に引けを取らない激しいドンパチが繰り広げられていますね。
作品の中ではめっちゃ怖いですけど、実際、鈴木亮平さんはめっちゃ良い人です(笑)。上林を演じるときは、瞳ががらっと変わるんです。色が失くなるというか......。でもカットがかかった瞬間に皆さん優しくなって、その切り替えがすごい現場でした。
――チンタが心底怯(おび)えることによって、上林たちの恐ろしさが何割増しにも引き立てられています。そのリアクションの取り方、受けの演技のようなものは意識されたんでしょうか?
現場に行けば、皆さんがいじめてくれるので(笑)、何か特別に意識するというより、僕は素直にそれに乗っていくだけでした。「今こういう作品をやっている」と自分から話したわけではなくても、友達に「なんか今日、調子いいね」と言われることがあったので、やっぱり気合が入っている事は自然と周囲にも伝わるんでしょうね。現場ではすごく幸せな時間を過ごすことができました。
――村上さんは今年でデビュー7年目。そろそろ「新人」と呼ばれる時期は過ぎた印象です。振り返ってみて、デビュー当初と今とで変化したことはありますか?
「やっと」という感じですかね。僕の出したい方向のエネルギーを出せる役柄がやっと演じられるようになった気がします。自分に対する周囲の見方もいろいろ変わったとは思いますが、主観で言うと、あまりデビューした頃と変わっていないんです。でも昔はもっと体内にある感情がぐちゃぐちゃしていました。今も生きづらさはあるけど、昔はもっと得体の知れないものが渦巻いていた。そういう意味では、今は自分のことが理解できるようになって落ち着いたのかもしれません。
■父親に育てられていたら、音楽をやっていたかも
――村上さんはデビュー当初、どうしても「父親が俳優の村上淳で、母親が歌手のUA」という文脈で語られることが多かったですよね。そこの葛藤も「感情がぐちゃぐちゃ」の中に含まれていたのでしょうか?
なくはないですけど、わりかし気にせず自分から親父(おやじ)や母親の話をしていました。自分のアイデンティティにおいて親が相当の割合を占めているのは事実なので、自然と話には出ちゃうじゃないですか。でも、親の顔が世間にバレていない人が親の話をするのと、僕が親の話をするのとでは、聞く側の受け止め方が全然違うんですよね。
――たしかに「あっ、親の話をした!」とは思われちゃいますよね。
そうなんです。僕としては今も昔も「親父(おやじ)なんで」「母親なんで」っていう感覚なんですけどね。
――そのような境遇で、こじらせ的な感情を抱くことはなかったんでしょうか?
僕、ひとつひとつの諦めが早いんです。「親父(おやじ)も母親もそれぞれ成し遂げてきたことがある。あれは自分にはできない」とは考えるけど、その一方で「これなら自分にできる」とも考える。諦めるかわりに、そこの判断も早いんだと思います。
――過去にトーク番組で、「両親が忙しかったから、『育ててくれていない』という恨みがあった。小さい頃は、『芸能界嫌い』と思っていた」と話していましたが......。
「なんだよ」という気持ちはありつつも、自分の知らない世界だからこそ興味もありました。特に、両親が離婚したあとは母親に育てられたので、音楽畑の人と会う機会は多くても、親父(おやじ)のいる役者の世界はよく知らないままで。そのぶん興味が強くなって、自分もそっちの世界に飛び込みました。だから、もしも父親に育てられていたら、逆に母親のいる世界のほうが気になって、音楽をやっていたのかもしれません。コインの表と裏じゃないですけど。
――「音楽畑の人と会う機会が多かった」とのことですが、周囲に楽しんで仕事をしている人が多い環境は、自分の仕事観にも影響を受けそうですね。
たしかに、それはあったかもしれないです。「ああいう大人になりたくない」って人格的な部分では感じたとしても(笑)、仕事というもの自体をネガティブに捉えるようなことはなかった気がします。
――では、ご自身の俳優業も絶好調ですし、今は「大人って楽しい」という感覚でしょうか?
いや、それは全然(笑)! 自分では絶好調みたいな感覚はないですし、相変わらず「人生ってダルいなー」と思っています(笑)。
■自分にとっては普通でも、他人からするとアーティスティック
――ここまでお話を伺ってきて、とてもマイペースな方という印象です。常に自分というものが乱れずにあるような......。
周囲に合わせるのが苦手なので、短所でもありますけどね。KYだって言われますし。
――昔からそのような性格なんでしょうか?
さすがの僕も幼稚園くらいまでは目がキラキラしていたんですけど、小学生から気だるげな目つきになってきた気がします。......なぜでしょうね。 もちろん親の離婚もデカかったと思います。学校とか環境もガラッと変わりましたし。でもやっぱりアレじゃないですかね、母親が玄米しか食べさせてくれなかったから(笑)。
――「白米! 唐揚げ!」みたいな食卓だったら、今の自分も少し違った?
白米はもっと食べたかった(笑)。普通になりたかったわけではないですけど、「"普通"って何だろう?」と追い求めるような部分はずっとありました。うちって家具も母親らしい独特な感じで、エキゾチックな香りが漂っていて、聞いたことないような名前の不思議な味の調味料があって。自分にとってはそれが普通だけど、他人からすると圧倒的にアーティスティックな環境らしいんですよね。
だから、「家ってどんな香りがするの?」って、たまに友達に聞いていました(笑)。GAPやユニクロの服を着てみたかったし、「公立学校の人たちが好きな漫画、ゲーム、スポーツ、盛り上がっている話題って何だろう?」っていう興味がありました。
――では、これまで「普通の学生」のような役を演じるときは、少し不思議な感覚だったでしょうね。
"普通"がわからないので、自分にとっては逆に新鮮な体験でした。そういう疑似体験ができるのは、俳優だからこそ。自分自身とは違う生き方も演じられるのが、この仕事の面白さのひとつだと思います。
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■トレンドニュース「視線の先」 ~築く・創る・輝く~
エンタメ業界を担う人が見ている「視線の先」には何が映るのか。
作品には、関わる人の想いや意志が必ず存在する。表舞台を飾る「演者・アーティスト」、裏を支える「クリエイター、製作者」、これから輝く「未来のエンタメ人」。それぞれの立場にスポットをあてたコーナー<視線の先>を展開。インタビューを通してエンタメ表現者たちの作品に対する想いや自身の生き方、業界を見据えた考えを読者にお届けします。
(取材・文/原田イチボ@HEW)
(撮影/ナカムラヨシノーブ)

俳優・村上虹郎
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■「新人」と呼ばれる時期は過ぎ、「やっと」という感覚
――『孤狼の血 LEVEL2』では、前作に引けを取らない激しいドンパチが繰り広げられていますね。
作品の中ではめっちゃ怖いですけど、実際、鈴木亮平さんはめっちゃ良い人です(笑)。上林を演じるときは、瞳ががらっと変わるんです。色が失くなるというか......。でもカットがかかった瞬間に皆さん優しくなって、その切り替えがすごい現場でした。

映画『孤狼の血 LEVEL2』
――チンタが心底怯(おび)えることによって、上林たちの恐ろしさが何割増しにも引き立てられています。そのリアクションの取り方、受けの演技のようなものは意識されたんでしょうか?
現場に行けば、皆さんがいじめてくれるので(笑)、何か特別に意識するというより、僕は素直にそれに乗っていくだけでした。「今こういう作品をやっている」と自分から話したわけではなくても、友達に「なんか今日、調子いいね」と言われることがあったので、やっぱり気合が入っている事は自然と周囲にも伝わるんでしょうね。現場ではすごく幸せな時間を過ごすことができました。
――村上さんは今年でデビュー7年目。そろそろ「新人」と呼ばれる時期は過ぎた印象です。振り返ってみて、デビュー当初と今とで変化したことはありますか?
「やっと」という感じですかね。僕の出したい方向のエネルギーを出せる役柄がやっと演じられるようになった気がします。自分に対する周囲の見方もいろいろ変わったとは思いますが、主観で言うと、あまりデビューした頃と変わっていないんです。でも昔はもっと体内にある感情がぐちゃぐちゃしていました。今も生きづらさはあるけど、昔はもっと得体の知れないものが渦巻いていた。そういう意味では、今は自分のことが理解できるようになって落ち着いたのかもしれません。
■父親に育てられていたら、音楽をやっていたかも
――村上さんはデビュー当初、どうしても「父親が俳優の村上淳で、母親が歌手のUA」という文脈で語られることが多かったですよね。そこの葛藤も「感情がぐちゃぐちゃ」の中に含まれていたのでしょうか?
なくはないですけど、わりかし気にせず自分から親父(おやじ)や母親の話をしていました。自分のアイデンティティにおいて親が相当の割合を占めているのは事実なので、自然と話には出ちゃうじゃないですか。でも、親の顔が世間にバレていない人が親の話をするのと、僕が親の話をするのとでは、聞く側の受け止め方が全然違うんですよね。
――たしかに「あっ、親の話をした!」とは思われちゃいますよね。
そうなんです。僕としては今も昔も「親父(おやじ)なんで」「母親なんで」っていう感覚なんですけどね。
――そのような境遇で、こじらせ的な感情を抱くことはなかったんでしょうか?
僕、ひとつひとつの諦めが早いんです。「親父(おやじ)も母親もそれぞれ成し遂げてきたことがある。あれは自分にはできない」とは考えるけど、その一方で「これなら自分にできる」とも考える。諦めるかわりに、そこの判断も早いんだと思います。

「自分の知らない世界だからこそ興味もありました。」
――過去にトーク番組で、「両親が忙しかったから、『育ててくれていない』という恨みがあった。小さい頃は、『芸能界嫌い』と思っていた」と話していましたが......。
「なんだよ」という気持ちはありつつも、自分の知らない世界だからこそ興味もありました。特に、両親が離婚したあとは母親に育てられたので、音楽畑の人と会う機会は多くても、親父(おやじ)のいる役者の世界はよく知らないままで。そのぶん興味が強くなって、自分もそっちの世界に飛び込みました。だから、もしも父親に育てられていたら、逆に母親のいる世界のほうが気になって、音楽をやっていたのかもしれません。コインの表と裏じゃないですけど。
――「音楽畑の人と会う機会が多かった」とのことですが、周囲に楽しんで仕事をしている人が多い環境は、自分の仕事観にも影響を受けそうですね。
たしかに、それはあったかもしれないです。「ああいう大人になりたくない」って人格的な部分では感じたとしても(笑)、仕事というもの自体をネガティブに捉えるようなことはなかった気がします。
――では、ご自身の俳優業も絶好調ですし、今は「大人って楽しい」という感覚でしょうか?
いや、それは全然(笑)! 自分では絶好調みたいな感覚はないですし、相変わらず「人生ってダルいなー」と思っています(笑)。
■自分にとっては普通でも、他人からするとアーティスティック
――ここまでお話を伺ってきて、とてもマイペースな方という印象です。常に自分というものが乱れずにあるような......。
周囲に合わせるのが苦手なので、短所でもありますけどね。KYだって言われますし。
――昔からそのような性格なんでしょうか?
さすがの僕も幼稚園くらいまでは目がキラキラしていたんですけど、小学生から気だるげな目つきになってきた気がします。......なぜでしょうね。 もちろん親の離婚もデカかったと思います。学校とか環境もガラッと変わりましたし。でもやっぱりアレじゃないですかね、母親が玄米しか食べさせてくれなかったから(笑)。
――「白米! 唐揚げ!」みたいな食卓だったら、今の自分も少し違った?
白米はもっと食べたかった(笑)。普通になりたかったわけではないですけど、「"普通"って何だろう?」と追い求めるような部分はずっとありました。うちって家具も母親らしい独特な感じで、エキゾチックな香りが漂っていて、聞いたことないような名前の不思議な味の調味料があって。自分にとってはそれが普通だけど、他人からすると圧倒的にアーティスティックな環境らしいんですよね。
だから、「家ってどんな香りがするの?」って、たまに友達に聞いていました(笑)。GAPやユニクロの服を着てみたかったし、「公立学校の人たちが好きな漫画、ゲーム、スポーツ、盛り上がっている話題って何だろう?」っていう興味がありました。
――では、これまで「普通の学生」のような役を演じるときは、少し不思議な感覚だったでしょうね。
"普通"がわからないので、自分にとっては逆に新鮮な体験でした。そういう疑似体験ができるのは、俳優だからこそ。自分自身とは違う生き方も演じられるのが、この仕事の面白さのひとつだと思います。

映画『孤狼の血 LEVEL2』
村上虹郎が出演する映画『孤狼の血 LEVEL2』GYAO!特集サイト>>
■トレンドニュース「視線の先」 ~築く・創る・輝く~
エンタメ業界を担う人が見ている「視線の先」には何が映るのか。
作品には、関わる人の想いや意志が必ず存在する。表舞台を飾る「演者・アーティスト」、裏を支える「クリエイター、製作者」、これから輝く「未来のエンタメ人」。それぞれの立場にスポットをあてたコーナー<視線の先>を展開。インタビューを通してエンタメ表現者たちの作品に対する想いや自身の生き方、業界を見据えた考えを読者にお届けします。
(取材・文/原田イチボ@HEW)
(撮影/ナカムラヨシノーブ)